核燃料サイクルの中心・六ヶ所再処理工場は完成が23回も延期され、もう一つの中核施設・高速増殖炉もんじゅはナトリウム漏れ事故でストップして20年、無残な姿をさらしている。新廃炉訴訟で今度こそトドメを刺さなくてならない。
福井県を中心にもんじゅから半径250`圏内の住民106人が昨年12月25日に東京地裁に起こした訴訟は、85年9月提訴の第一次から30年目になる。
何重もの危険性
もんじゅは、プルトニウムとウランの混合酸化物燃料を使い、ナトリウムを冷却材とする。非常に高い毒性と2万4000年もの半減期のプルトニウムを燃料とし、酸素や水と激しく反応して燃焼・爆発し、コンクリートと接触しても同様の反応を起こして建造物を崩壊に導くナトリウムが冷却材という極めて深刻な問題を抱えている。
1995年12月8日、二次冷却系で温度計のさや管の破損からナトリウム漏れ事故を起こしたが、耐震性に大きな問題がある。と言うのは、もんじゅは軽水炉に比べて非常に温度が高いことから配管の厚みを薄くし、伸び縮みが激しいためぐるぐる引き回した配管の支持装置があちこちにぶら下がっているためだ。しかも、わずか500bに活断層が存在する。
技術能力がない
こうした危険で厄介な代物を運営する主体が隠ぺい体質であり、技術能力が欠如しているという問題が加わる。
隠ぺい体質は、95年の事故で、ナトリウムが床のコンクリートと接触しないために敷いている鉄のライナーに穴が開いて接触し、蒸気発生器の伝熱管の破損破断が起きていたが、その事実が秘匿されていた。さらに、「動燃」のシミュレーションでは高速増殖炉の暴走は避けられず、炉心崩壊事故が起きうるという結果が出ていたのに隠ぺいされていたのである。
そして、今回の裁判の争点である技術能力の問題だ。原子力規制委員会は、現在の運営主体である日本原子力研究開発機構に技術的能力が「ない」とはっきり言っている。技術的能力があることが設置許可の要件だ。従って、これは取り消すのが当然である。
規制委の田中俊一委員長は昨年10月21日の記者会見で、「文科省の説明は我々が納得できる段階のものではない。今後の対応については慎重に検討する。原子炉等規制法で定められた設置許可の取り消し処分についても排除しない」と述べている。
そして、「高速増殖炉を運営するに当たって原子力機構を上回る技術を持っている組織は現時点では存在しない。従ってそれに代わる組織が運営するのは余計に危険」(福井県原子力安全専門委員会での中川英之委員長の発言)なのである。
今回の訴訟でも代理人を務める海渡雄一弁護士は、「非常に単純明快な訴訟で、短期決戦で必ず勝利する」と述べている。
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