京都地裁は建設アスベスト訴訟で建材メーカーの責任を認める初の判断を示した。判決は5例目で、うち3例が国の違法性を認めたが、メーカーの責任を認めた例はない。国とメーカーは被害者へ謝罪と全面的な救済へ早急に動くべきだ。
京都地裁(比嘉一美裁判長)は1月29日、関西建設アスベスト京都訴訟(原告27名)で、国及び建材メーカーの責任を認め、国に総額1億418万円、建材メーカー9社に総額1億1245万円の支払いを命じる原告全面勝訴の判決を言い渡した。
「命あるうちに」
訴訟は、建設労働者とその遺族が、危険なアスベストを含む建材を製造販売し続けた企業と、適切な規制を怠り流通を促進した国に損害賠償を求めたもの。原告らは、アスベストの危険性や建材にアスベストが含まれていることを知らされずに作業に従事、アスベスト粉じんを吸引し、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、肺がん、中皮腫など重篤な病を患った。被害者26名のうち16名死亡が物語るように、被害は極めて深刻で、原告らの「いのちあるうちに救済を」との願いは切実だ。
国の責任は確立
判決は、吹付作業規制は1972年10月1日以降、建設屋内での石綿切断等作業は74年1月1日以降、屋外での石綿切断等作業は2002年1月1日以降、国が防じんマスクの着用や集じん機つき電動工具の使用、さらに警告表示を義務づける規制を怠った違法性を認めた。
建設アスベスト被害で国の責任が認められるのは、東京、福岡、大阪(1月22日)の各地裁判決に続き4度目で「国の責任」を認定する司法判断は確立したといえる。また、判決は、専ら屋外作業に従事していた屋根工に対する関係でも国の責任を認め、屋外作業の危険性を否定する国の誤りを明確に断罪した。
一方、判決は「一人親方」について、労働安全衛生法の保護対象に含まれないとして救済を否定したものの、立法府の責任で解決されるべきと指摘した。
判決は、主要なアスベスト建材メーカーのエーアンドエーマテリアルやニチアスなど9社の共同不法行為責任を認定し、初めて企業賠償責任を認めた。アスベストの危険性を知りながら、利益追求のため製造・販売を続けたメーカーの責任を認めたのだ。
「基金」の創設を
企業に賠償を命じた判決は、アスベスト被害者の救済の可能性を大きく開くもので画期的。3月に結審予定で、年内にも判決見通しの札幌訴訟への良い影響も期待できる。
そして、全ての被害者が早期に救済されるよう、「建設作業従事者にかかる石綿被害者補償基金制度」(仮称)を創設すべきである。また、国と企業は、解体・改修工事等、建設現場でのアスベスト飛散を完全に防止するために万全の対策を行い、将来の被害発生を防止すべきだ。
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