朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は、1月6日の地下核実験に続いて2月7日には人工衛星を打ち上げた。これに対し、米国をはじめ各国が非難と制裁の動きを強めているが、問題の本質は世界各国が核抑止の論理から脱却することにある。
朝鮮は、打ち上げたのは地球観測衛星とし、米韓日はミサイルと非難する。人工衛星か、核弾頭かの違いはあるにせよ、いずれの運搬手段もロケットであり、何を搭載するかが問題だが、朝鮮が長距離弾道ミサイルの打上げ技術を開発したことには相違ない。
だから、米国は自国本土が射程距離に入ったことで非難と制裁を強硬に主張している。日本政府はより強い制裁と包囲網の強化を表明、衆参両院は非難決議をした。一方、朝鮮は拉致・特定失踪者を含めた日本人に関する包括的調査(ストックホルム合意)の破棄を通告した。
米国は、韓国と弾道弾迎撃ミサイル・システム(THAAD)を配置する協議を開始。これに対し中国は、韓国へのミサイル配備に懸念を表明するとともに制裁ではなく話合いを主張している。
プラハ演説の今
今回の事態で日米韓は軍事的・経済的な包囲網の構築に走り、朝鮮は次々と対応処置を打ち出している。問題は平和的な出口が見えないことだ。問題の本質を探れば、戦後世界の核独占の軍事的抑止論に行き着く。
オバマ米大統領は09年、チェコのプラハで「私は米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言する」と演説し、世界はこれをこぞって歓迎した。だが、オバマの決意と現実は大きく乖離している。96年に国連で採択された、あらゆる核実験、核爆発を禁じる包括的核実験禁止条約(CTBT)は米国はじめ中国、エジプト、イラン、イスラエルが未批准、インド、パキスタン、朝鮮が未署名・未批准で、未発効だ。
また、70年に核拡散防止条約(NPT)が発効し、国連安全保障常任理事国5カ国以外の核保有と取得が禁止された。だが、インド、パキスタン、イスラエルは5カ国の核独占を認めずNPTに加盟していない。他方、加盟国だった朝鮮は93年に脱退表明し、現在に至っている。このNPT未加盟の4カ国は事実上の核の保有国だ。この背景には5カ国の核独占による「核抑止論」に対する反動がある。核兵器保有を背景として、自らの価値観と異なる国へのパワー外交が未だ世界を支配していることだ。
「休戦」の終結を
朝鮮半島は未だ38度線を境に休戦状態にある。今なすべきことは制裁や包囲ではなく、米国が朝鮮敵視政策を止め、朝鮮半島非核化のための和平会談の場を提案することだ。
また、米国の二重基準外交からの決別が必要だ。米国をはじめとした核も、朝鮮の核も等しく廃絶されるべきである。
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