高市早苗総務相が「電波停止」発言を繰り返し、発言を追認する「統一見解」を安倍内閣が出しても報道機関などの反応は鈍いという。そうした中で、放送を語る会と日本ジャーナリスト会議が厳重抗議と辞任要求の「声明」を出した。
高市早苗総務相は2月8日と9日、国会答弁や記者会見で放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法第4条違反を理由に、電波法第76条に基づいて電波停止を命じる可能性を表明した。
右派が意見広告
高市発言ついて新聞各紙は発言の内容を報道し、社説や特集などで取り上げ、批判している。ところが当事者である放送局の方は、民法がニュースの中で短く報じたもののNHKはメーンのニュース番組でも全く報道しなかったという。
沖縄国際大学の佐藤学教授(米国政治)は、毎日新聞朝刊2月20日付「メディア時評」で「(高市発言が)報道機関全体から大きな批判を生みだしていないように見え、懸念される」と述べている。
報道機関の足元を見透かすように、右派人士が名を連ねる任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」は、読売新聞2月13日付朝刊に「ストップ!“テレビの全体主義“」とする1面全ページを使った意見広告を掲載した。同会は高市発言との関連を否定したというが、符節ぴったりではないか。
広告は、NHKと民放キー局5社が特定秘密保護法と安保法制で賛否の「両論」をどのような時間割合で報道したかを円グラフにし、「TVの電波は独占状態!」「誰が国民の『知る権利』を守るの?」と主張している。
同会の意見広告は昨年11月に読売と産経に出したのに続いて2回目だが、前回の意見広告で標的になったTBSの岸井成格氏、さらにテレビ朝日の古舘伊知郎氏、NHKの国谷裕子氏の各キャスターの降板がその後発表されている。
時の大臣の思想
さて、放送を語る会と日本ジャーナリスト会議が2月12日に出した「声明」は、高市発言について「この主張の核心は、権力が放送における言論、報道の内容を審査し、その内容によって行政処分ができるというものである。憲法が保障する言論・表現の自由にたいする許しがたい攻撃だと言わなければならない」と厳しく批判。
その上で、「このような主張を持つ人物が、放送を所管する総務大臣の職にあることを到底認めることができない」と高市氏の速やかな辞職を求めている。
さらに声明は、「停波処分が可能であるとすれば、その判断に時の総務大臣の主義、思想が反映することは避けられない」と指摘、高市氏がかつて「原発事故で死んだ人は1人もいない」と発言したことなどを上げ、「このような政治家が放送内容を『公平であるかどうか』判定することになる」と警鐘を鳴らしている。
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