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2016.04.05
16春闘 中小へ
生産性基準原理を打ち破れ
 

 
 16春闘は3月16日の金属労協を皮切りに一斉に回答が示された。最大の焦点はベア実施と大幅賃上げ。内部留保を354兆円にまで膨らませた経営側の回答は「低額ベア水準」だった。低い要求に“相応しい”低額回答に抑えられた。


 昨年10月、政労使会議に代わる「官民対話」が創設された。安倍晋三首相は「GDP名目600兆円の実現のため人材に積極的投資。今年を上回るベアと賃上げで経済の好循環を達成する」と経済界に呼びかけた。当初は受け入れた経済界も、年末からの株安・円高・原油安で「賃上げは一時金込みの年間ベース」に転じてベアを拒否した。


 二度あることは


 安倍首相は、賃上げによって改憲の野望実現に弾みをつけようと3月4日の「官民対話」で「二度あることは三度ある」などと経済界に改めて大幅賃上げを要請した。しかし、榊原定征経団連会長は「収益拡大の企業は年収ベースで賃上げを呼び掛ける」とベアを否定した。
 金属労協はじめ大手労組は3月に入ると経営側と水面下の交渉を進めており、「回答指定日」はセレモニーに過ぎない。労働組合側は交渉で「生活実態に根ざした賃金・賃上げ実現」をこれまで訴えてきた。しかし、経営側は経営環境で回答を判断するという「生産性基準原理」を徹底している。
 トヨタに象徴されるように労働組合は「生産性基準原理」に追従する「交渉重視・一時金対応」に傾斜、「年収ベース」を受け入れた。今期の純利益が2兆2700億円(4%増)になる見通しを発表したトヨタは、「今後の為替の状況、新興国での環境規制の強化などで経営環境の潮目が変わった」(豊田章男社長)とベアに背を向けた。
 トヨタの研究開発費の税控除は1000億円を超える。自動車や電機など大企業は国の支援で莫大な利益を上げる。その大企業が、「先行き経営不安」の印籠をかざすと「ベア抑制」が簡単に通る。経営側が「この世の春」を謳歌するのも、当然と言えば当然。


 官製春闘は失速


 16春闘は「官製春闘」が失速、「二度あることは三度」も通じなかった。安倍首相と菅義偉官房長官は回答に対するコメントを避け、労働音痴の石原信晃再生相だけが「賃上げの流れは続いている」と的外れの発言だ。
 連合が3月18日発表した第1回の回答集計は2・8%(15年比マイナス0・35%)で2%はかろうじて超えた。先陣を切った金属労協の結果では、中小への波及効果は厳しい。政財界と連合は、16春闘の回答を好意的に受け止める。しかし、15春闘の賃上げは2・20%(中小1・88%)だったが、12月の実質賃金はマイナス0・9%まで落ち込んでいる。
 「抑え込まれ春闘」が繰り返されると労働組合は劣化する。ベアにこだわり、全体を押し上げる春闘にしないと経営側に対抗できない。




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