日本国憲法は1947年5月3日に施行され、今年で69年目を迎える。施行の年の7月、当時の文部省が中学1年生用教科書で『あたらしい憲法のはなし』として憲法を分かりやすく解説しているが、憲法の素晴らしさが読みとれる。
戦後日本の新たな社会をつくる出発点は、ポツダム宣言と日本国憲法だろう。日本社会はこの2つを基礎に制度を構築し、経済的発展を遂げてきた。また戦争で世界が憎しみの連鎖を生むなか、日本は平和外交を基本に戦争はもちろん、銃弾1発も撃つことなく世界の信頼を得て「名誉ある地位」を築いてきた。
首相が改憲を主導
だが、憲法は施行69年を迎える中、今や明文改憲が公然と語られ、総理大臣が改憲をリードする危険な情況がある。
改憲論者の安倍晋三首相は2015年5月の党首討論で「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」と臆面もなく口にした。6月には「読んでいる」と、ご丁寧にも答弁書を閣議決定する始末。アジア・太平洋戦争終結のために無条件で受諾したポツダム宣言を「つまびらかに読んでいない」とは驚きだ。もちろん改憲を唱える安倍首相のことだ、憲法は一度くらい読んだことがあるだろう。だが、憲法の原理をやさしく説いた『あたらしい憲法のはなし』は多分読んでいないだろうから一読をお勧めする。読めば自らの主張や思考が憲法の原理・原則を完全に無視していることを自覚できよう。安倍首相はもちろん、自公両党はじめ改憲を唱える諸君は、『あたらしい憲法のはなし』を読み、自らの愚かさを自覚するがよい。
日本国憲法は硬性憲法であり、改正について96条で高いハードルを設けている。愚かで危険な改憲に突進する安倍首相は、13年にそのハードルを壊そうとしたが、世論がそれを許さず断念した。
非常事態条項企む
安倍首相は未だ96条改憲の執念を捨てていないが、今度は9条明文改憲の入り口として「非常事態条項」の改憲案を持ち出した。12年に策定した自民党憲法改正草案の緊急事態条項では、内閣総理大臣が緊急事態を宣言し、「国民の生命、身体及び財産」に関する措置では「国その他公の機関の指示に従わなければならない」とし、国民の様々な諸権利を制限する。権力が総理大臣に集中し、国民の諸権利を大幅に縛る危険な条項を「加憲」しようしている。
今でも安倍政権は戦争法や原発再稼働、辺野古新基地建設などの強権的な対応や、国権の最高機関である国会をないがしろにする姿勢は目に余るものがある。「聞く耳持たず」どころか、警察権力の弾圧も日常化し、今国会では盗聴法大改悪など刑事法制の改悪が強行されようとしている。
5月3日の憲法施行69年に際し、再度憲法の素晴らしさを確認し、改憲暴走を止めよう。
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