菅義偉官房長官は4月15日の記者会見で熊本地震への対応について、憲法の新設項目として非常時に首相権限を強化できる「緊急事態条項」の必要性を主張したが、明らかに「すり替え」であり、今回の地震を政治利用するものだ。
菅官房長官は熊本地震の発生を受け、憲法に緊急時の政府の権限などを定めた「緊急事態条項」を設ける必要性を問われたことに、「今回のような大規模災害が発生したような緊急時に、国民の安全を守るために国家や国民がどのような役割を果たすべきかを、憲法にどう位置づけるかは極めて重く大切な課題だ」と答えたと伝えられる。
やらせのやり取り
この取って付けたようなやりとりには、「シナリオがあったとしか思えないようなスムーズなものだった。おそらく、菅官房長官とべったりの安倍応援団メディアの記者と事前にすり合わせをして、質問させたのでは」という指摘もある。
自民党は、野党時代の2012年にまとめた憲法改正草案の98条に緊急事態条項を盛り込んでいるが、自然災害やテロ対策などを理由に、憲法秩序を一時停止して非常措置を行う権限、「国家緊急権」を政府に与えるというものだ。
首相が緊急事態を宣言すれば、法律と同じ効果を持つ政令を出すことや、国会議員の任期を延長できるなどとしており、安倍晋三首相も、昨年11月の衆院予算委員会で「草案のどこから始めるべきか、緊急事態条項からやるべきだという議論もかなり有力だ」と答弁している。
そして、安倍首相はこの夏の参院選で改憲発議に必要な3分の2を得ようとなりふり構わない姿勢を露骨にしている。菅官房長官も「変えられるところから手をつけていくということは、当然のことではないか」と述べたと伝えられる。
憲法に緊急事態条項を加えることを「お試し改憲」などという向きもあるが、そんな軽いものではないことは言うまでもなく、憲法に穴をあける企てを決して許してはならない。
改めて言うまでもないが、災害時の政府対応は、災害対策基本法が定める首相の「災害緊急事態の布告」で主導的に行うことが十分可能である。事実、東日本大震災の被災地に、政府の災害対応についての法改正が必要かどうかのアンケートにほとんどの自治体が「必要がない」という回答を寄せている。災害対策に「国家緊急権」など全く不要であり、有害であることを改めて強調しておく。
オスプレイの目的
さらに熊本地震にかこつけて在日米軍のオスプレイが救援物資の輸送などに当たっているが、これも露骨な世論誘導・政治利用だ。米軍が救援に協力する映像を流させ、イメージアップし、集団的自衛権行使や辺野古新基地建設問題で国民の支持をとりつけようという意図が露骨であり、見え見えではないか。
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