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2016.05.24
高レベル最終「処分」
原発内で永久保管しかない
 

 
 原発が稼働すれば放射性廃棄物が生産され、増える。とりわけ厄介な高レベル放射性廃棄物の処理問題で最近、新たな動きが2件あった。九州電力玄海原発のある佐賀県玄海町長の発言と、最終処分に関するシンポジウムの開始である。


 高レベル放射性廃棄物は、原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを分離する再処理の際に残る廃液で、ガラスで固めた直後の放射線量は、人が浴びると20秒で死ぬ毎時1500シーベルトにも達し、天然ウランと同程度の線量に下がるまでには数万年かかる。


 態度を変えた理由


 玄海町の岸本英雄町長は4月27日付毎日新聞インタビューで高レベル放射性廃棄物最終処分場の受け入れについて、「町が適地と示されれば町民説明会を開き、国とも協議したい」との意向を示した。同町は、昨年7月に毎日新聞が全国の原発立地自治体を対象に実施したアンケートには、国から処分場の申し入れがあった場合に「断る」と回答したという。
 岸本町長は、「断る」理由を「処分場を造るには土地がないと考えてきた」と説明。経済産業省が4月19日、沿岸部の海底地下に埋め立てる工法を提示したことで「前向きになった。技術的には可能と考えている」と変更の理由を述べる。
 国は、強固な地盤などの条件を満たした「有望地」を示した上で、自治体に協力を申し入れる方針だが、岸本町長は「適地になるだろう」とする。最終処分場候補地を巡っては、「応募方式」だった07年に高知県東洋町長が応募、反対運動で白紙に戻って以来、表立って前向きな姿勢を示す自治体や首長はなかった。
 岸本町長の表明に対して東洋町の沢山保太郎前町長は4月28日、玄海町役場を訪れ、「事故が起これば玄界灘は死の海となる。心を改め、発言を撤回するようお願いする」とする抗議文を提出した。


 「有望地」公表へ


 こうした中、経産省資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)が最終処分に関して全国で開く一般向けのシンポジウムが5月9日、東京都を皮切りに今後、全国8都市で開催し、自治体向けの説明会も各地で開かれる。 
 国は日本地図を塗り分ける形で最終処分場の「有望地」を年内に公表する。その後に各地で対話などを重ね、理解を得られた地域で文献調査など具体的な選定作業に入る。


 原発敷地内に留め


 だが、事実は地下に埋設して数万年も安全なところなど、どこにもないということだ。ましてプレートがせめぎあって活断層が無数に走り大地震が頻発し、火山帯も多く、地下水が豊富な日本列島には、陸にも海底にも地下処分の適地などあろうはずもない。
 使用済み核燃料の扱いで考えられる唯一の方法は、原発敷地内に留め置き、国と電力会社が責任を持って半永久的に保管管理することだ。




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