安倍政権の暴走が言われて久しいが、暴走の一つに、行政権を持つ内閣が、立法府である国会の議論や意思を無視し、好き勝手に振る舞っていることがある。三権分立の否定・民主主義の否定だ。全力でストップをかけなくてはならない。
国会は「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」(憲法41条)。そのために与野党が審議を尽くすことが求められる。
度重なる強行採決
安倍晋三氏は足掛け6年、首相の座にある。2006年9月から07年9月まで1年、12年12月から現在まで5年間だ。その間、日本の進路に関わる重要法案を何度も強行採決した。最初が、「第二の憲法」といわれる教育基本法の改悪だ(06年11月)。
政権運営に行き詰まり、健康問題もあって政権を放り出した安倍氏が返り咲いてやったのは、秘密保護法案の深夜の強行採決だ(13年12月6日)。15年9月19日には「安全保障関連法案」(戦争法)を徹夜国会の未明に強行採決した。さらに今年6月15日、共謀罪法案を委員会採決せず、参院本会議で中間報告という形で強行した。加えて、これら戦争法制の一環であるマイナンバー(共通番号)法も13年5月に強行した。
また、「森友・加計学園疑惑」では、憲法62条が規定する「証人喚問や記録の提出」を、「国会がきめること」として拒否し続けている。
憲法を守らぬ首相
さらに今年6月、森友・加計疑惑究明などのため野党が憲法53条に基づいて臨時国会の開会を要求したが無視した。そして、9月28日に臨時国会を開くや冒頭解散の暴挙だ。解散権の乱用、大義なき解散、「モリ・カケ」疑惑隠し、火事場泥棒解散など、世論の厳しい批判を浴びながら、民進党の崩壊などに助けられて与党大勝で安倍一強は維持された。
11月1日開会した第195回特別国会は12月9日までわずか39日間。それも政府・与党は当初、8日を提案、世論と野党の厳しい反撃にあって39日間とした。
しかし、内実は首相の外交日程などで切り詰められた。その上、与党は質問時間の議席数に応じた配分、つまり野党の時間の大幅削減を持ち出した。「政府・与党一体」の言葉の通り、法案は閣議決定前に与党が審議し、法案は野党の質問でチェックされる。国会に課せられた行政全般のチェックは、ほとんど野党が果たしてきたのである。
無駄な質問の典型
昨年の臨時国会・衆院内閣委でカジノ法案の審議の際、自民党議員が「時間が余った」と「般若心経」を唱えたことがある。与党議員に質問時間を与えても、無駄以外の何物でもないことを示す象徴的な出来事だった。
野党の質問時間削減は、立法権、予算審議権など国会の権能を揺るがす。安倍自民党の暴挙を許してしまえば、日本の民主主義は死ぬことになる。