「原発を即時廃止し、自然エネルギーに全面転換」の機運が盛り上がってきた。立憲民主党や小泉純一郎元首相らの「原自連」が「原発ゼロ」法案を発表し、他の野党も「原発ゼロ」を基本に、安倍政権に対抗する構図が見えてきた。
埼玉県会の意見書
「世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を求める」意見書が昨年12月、埼玉県会で自民党や無所属などの賛成多数で可決した。原発の「安全神話」などすでに崩壊しているにもかかわらず、「優れた安定供給性と効率性を有している」など推進派のウソを丸呑みにしたものだ。
県民からは「寝耳に水の話。電力消費地の埼玉県が、原発の立地県にリスクを押しつけた意見書の可決は許されない」と抗議の声が高まっている。福島原発の事故後、埼玉県には双葉町などから多くの人が避難し、今なお暮らしており、被害者の心をさらに傷つけるものだ。
こうした自民党の動きの一方で、電力会社は再稼働に向けて送電線の「空き」があるにもかかわらず、「空きゼロ」と公表。また、送電線の使用料を高額にし、再生エネ業者を閉め出している。そのため、新興の再生可能エネ事業者の負担が重くなり、事業の断念が増えている。
過酷事故起きれば
東電福島第一原発の3・11事故による避難者数は福島県の発表でピーク時( 12年5月)に16万4865人、昨年11月も5万3275人が避難を続けている。
福島第一の1 、2、3号機の炉心が溶融する「過酷事故」が起きたからだ。地震大国のニッポンでは40基が運用中、建設・計画中が8基あるが、原発がある以上過酷事故は再び起りうる。歴代の自民党政権と電力会社はそうしたリスクをひた隠しにし、発電費用は原発が一番安いなどと大嘘をついてきた。事故や「もんじゅ」の負債、「中間貯蔵施設建設」などを加えるなら、とてつもなく高コストにもかかわらずだ。 核分裂の制御は完全にはできず、核分裂すれば放射性廃棄物(死の灰)が生成する。人類は、放射能を消す能力をもっておらず、10万年、100万年単位で閉じ込めなければならない。後世代にとてつもない負の遺産を押し付け、残すことになるのである。
原再稼働反対6割
福島事故で原発の危険性や高コスト体質が国民の前に明らかになったことで、再稼働反対の世論は6割を超える。こうした原発の本質や世論を背景に「原自連」や立憲民主党の「原発ゼロ」法案は出てきたのである。
「3・11」で、原発がなくても電気の供給に問題ないことを国民は知った。大事なことは、私たちの生活を見直すことだ。浪費を止め、資源が永続的に利用できる太陽光など自然エネルギーにシフトし、二酸化炭素の排出がないエネルギーに移行させることが求められている。