多くの人たちの人生を狂わせてしまった2011年3月11日の東日本大震災・原発事故から7年になろうとしている。しかし、福島第一原発事故は一向に収束せず、終わりの見えない事故処理が続いている。事故の教訓は原発ゼロ≠セ。
東電福島第一原発事故から間もなく7年。事故によって避難を余儀なくされている人は、福島県の発表によれば昨年11月時点で5万3275人もいる。
住民を「帰還させる」ための除染には何兆円の税金が投入され、汚染物質が詰め込まれたフレコンバッグは900万個以上溜まっているが、その最終処分場は決まっていない。
「安全」と強弁して
原発事故で放射能汚染が広がり、避難指示区域に指定された地域から住民は避難を強制された。政府は大金をつぎ込んで汚染地域を「除染」し、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示を解除し、避難先の住宅支援も打ち切った。
しかし、除染しても多くの地域では年間1ミリシーベルト以下に戻すことは不可能。そこで政府は福島に限って年間の限度線量を20ミリシーベルトとし、「安全」と強弁して避難指示を解除した。
子どもを持つ若い世代では、帰還しないと決めた割合が多い。福島県内の子どもの検査で甲状腺がんと診断された人は、昨年11月までに154人、疑いが39人となっている。
各種放射能に起因すると見られる病気が増えているという。放射線から子どもを守る最善の方法は避難だから、汚染地に子どもを戻す政策は真逆だ。
核のゴミ処理問題 報道によれば、原発の解体で出る金属やコンクリートなどの「低レベル放射性廃棄物」について、廃炉を計画している大手電力7社がいずれも処分地を確保できていないことが明らかになっている。
原発から出るゴミは、使用済み核燃料を再処理してできた高レベル放射性廃棄物もあり、10万年も安全に管理する必要があるが、何の見通しも立っていない。
原発ありきの改定
福島の教訓や解決のめども立たない核のゴミの処理問題を考えれば、「原発ゼロ」は当然の帰結だ。しかし、今年4月から5月にかけて政府・経済産業省が行おうとしている「エネルギー基本計画」の4年ぶりの改定は原発ありきであり、再生エネルギーの成長に水をさす方向だ。
「計画」の見直しを議論する経産省の有識者会議「基本政策分科会」の委員18人は、再稼働など現行計画の容認派で占められており、「原子力ムラ」は今回の改定で新増設など原発推進をさらに加速しようとしている。
また、安倍政権は、日立が英国に計画している原発の新設では債務保証する。福島原発事故は収束せず、被害者は置き去りにされたままだ。このまま原発政策を推し進めれば、国の崩壊につながる。福島の事故はそのことを警告している。