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2018.03.13
「追悼の碑」裁判
脅かされる「表現の自由」


 第2次大戦中に労務動員され死亡した朝鮮人労働者の追悼碑を巡る訴訟で、群馬県は設置期間更新を不許可とした県の処分を取り消した一審判決を不服として控訴。原告の市民団体も控訴し、「表現の自由」について二審で再度訴える。


 裁判は、高崎市の県立公園「群馬の森」にある朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑を巡り、県が設置更新を不許可とし、碑を管理する市民団体が処分の取り消しなどを求めた。


 裁量権逸脱で違法


 前橋地裁は2月14日の判決で、碑を建てた団体側が碑の前で開いた追悼式の一部が「政治的行事」に該当すると判断、建設の条件に違反したとしたが、県は団体側が示した式自粛などの代替案を十分考慮しないまま不許可にし、「裁量権を逸脱し違法」として県に処分の取消しを命じた。
 県は、「条件違反したにもかかわらず許可するとなれば矛盾した状態に陥る」として控訴。市民団体は控訴しないよう県に求めたが、県が控訴したことから控訴、主張が認められなかった主要な争点「表現の自由」について二審で再度訴える。判決は「施設の設置が何らの制限を受けないというものではない」として原告の主張を退けた。「政治的発言」とは 追悼の碑は2004年、県が碑の前で「政治的行事をしない」との設置許可条件を付け、市民団体「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を守る会の前身団体が建立した。しかし、その後に「守る会」が碑の前で開いた慰霊行事で、出席者が「強制連行」という政治的発言をしたとして、14年に設置更新を不許可とした。
 「守る会」の角田義一弁護団長は「判決が強制連行という言葉を使っただけで政治的な発言としたのはナンセンス。強制連行は歴史的に確立した用語。表現の自由の問題は高裁で大きな争点になるだろうし、認められるべき」としている。


 背景に右派のうごめき


 県が設置許可更新に応じなかった背景には、右派団体や右派メディアの動きがある。右派団体は14年3月、追悼集会での発言などが「設置条件違反」として「追悼碑の設置許可取り消しを求める請願」を県議会に提出、自民党や公明党新星会などの賛成で採択された。産経新聞なども追悼碑に関する批判記事を繰り返し掲載し、右派的な衛星報道メディアも批判特集を組んだ。


 政治的中立性巡り


 いわゆる「政治的中立性」を巡る訴訟では、金沢市が市役所前広場での自衛隊パレード反対集会を不許可にした問題で金沢地裁は16年、「市の中立性に疑念が生じる」などとし、許可を求める主催者の原告が敗訴した。
 一方、憲法9条を詠んだ俳句(梅雨空に『9条守れ』の女性デモ)の公民館だよりへの掲載を拒まれた女性が、さいたま市を訴えた訴訟では、さいたま地裁が17年、市側の違法性を認め、慰謝料支払いを命じている。



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