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2018.05.08
『板門店宣言』
戦争繰り返さぬ!民族の思い
 「板門店宣言」は、東アジアの不幸な歴史を大転換させる道を大きく切り開いた。南北の努力と朝鮮民衆の悲願に応えるために、「過去の失敗」は「圧力の不足」のためなどの空論を払拭し、日本の歴史的責任をどう果たすかが問われる。

 南北首脳会談は2000年(金大中・金正日)と2007年(慮武鉉・金正日)にも開かれたが、合意は実らなかった。しかし、今回は異なった条件下で新たな一歩を踏み出した。
 数カ月前まで朝鮮半島は戦争前夜だった。長く続いた韓国保守政権の対北対決路線の残滓とトランプ米政権の好戦的な態度、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核とICBM実験でチキンゲームの極限にあった。

文大統領の決断で 
 つい2カ月前、トランプ氏が「小型核兵器の使用解禁」に言及した時は世界が肝を冷やした。武力による圧力では破滅に向かう現実が突き付けられた。その時、このゴーディアンノット(手に負えない結び目)を断ち切る決断をしたのは韓国の文在寅大統領だった。その背後には、民族同士が殺し合う戦争を二度と繰り返さない朝鮮半島の民衆の思いがある。 
 こうして「板門店宣言」が実現したのである。日本のメディアや保守勢力は「北の核放棄計画が不明」とか、「今までの合意は全て裏切られた」と言う。だが「完全な非核化」に「北」が同意したのは初めてで、従来から大きく前進した。
 また、「合意」は、朝鮮の非核化だけではなく、半島の非核化だ。東アジアを覆う強大な核の傘を米国がどう縮小するかは、恐らく米朝首脳会談でもすぐには具体化できないだろう。「傘」を畳まぬよう懇願する安倍晋三首相のような輩もおり、「非核化計画」に時間がかかるのは仕方がない。
 過去の核開発中止合意の破綻の責任を朝鮮だけに負わせるのは非現実的だ。リビアのカダフィ政権が核開発を放棄した後、内戦への米欧の軍事介入で崩壊、カダフィが暗殺されたこと、大量破壊兵器保有というウソを口実に軍事力でイラクのフセイン体制が破砕されたこと、これらが朝鮮を刺激しないわけがない。
 トランプ政権の「斬首作戦」、米韓合同軍事演習(戦争法成立で日本も参加)などもあった。「北はわが身が安全と感じるまで草の根食べても核開発する」とのプーチン露大統領の言は的を射ていた。

植民地支配の責任 
 朝鮮の悲劇は、長年植民地支配をしてきた日本に最大の責任がある。「拉致問題」だけでなく、全ての問題の解決に反省を込めて誠実に向き合うべきなのである。南北首脳の晩餐会のケーキに目くじら立てる日本外交のレベルは恥だ。
 「北が信用できるか」など子どもじみた議論は卒業し、朝鮮半島の民衆の願いと共鳴するに違いない“非武装憲法”を汚す愚行は止め、「宣言」の歴史的事業にエールを送ろう。