延長国会最終盤のもう一つの焦点は、「参院選挙比例選の一部に拘束名簿式を導入し、『特定枠』として優先的に当選させることを柱とする公選法改定案」だ。大義名分ゼロ・自民党内の事情・党利党略の改定を許してはならない。
自民党が提出し、7月6日に審議入りを強行した参院の「1票の格差」是正に向けた公選法改定案は、定数を現行242から6増の248とする内容だ。
選挙区では「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を維持しながら、議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区を2増とする。比例代表では定数を4増やし、比例代表名簿の一部で「拘束名簿式」の特定枠を設ける。改憲案との整合性 そもそも今回の改革は、13年参院選の1票の格差を「違憲状態」とした最高裁判決を受けての対応だ。15年に公選法を改正し、合区を初めて導入したが、同時に付則で19年の参院選に向け「選挙制度の抜本的な見直しを検討し、必ず結論を得る」と明記していた。
確かに期限は迫っている。しかし、自民党案はひど過ぎる。自民党は、今年3月までに示した改憲案に参院選の合区解消を盛り込み、各都道府県から少なくとも1人の議員を選出できるようにする考えを示していた。
これについて新社会党は、「参院・国会議員が国民の代表であることを否定・放棄するもの」と厳しく批判を加えているが、今回の改定案では合区を維持するとしており、「改憲案との整合性はどうなるのか」と聞きたくもなる。
比例代表に特定枠を設けることについては、もっと疑問がある。現行の比例代表は、政党が順位を付けずに候補者個人の得票順で当選者が決まる「非拘束名簿式」だ。自民案はその一部に事前に決めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」の特定枠を導入する。
選挙区から外れた候補者に比例区に回ってもらうのは、何の問題もない。しかし、その人が必ず当選できるように拘束名簿方式を一部導入するというのは民主主義否定の邪道以外の何物でもない。
しかも、合区の高知・徳島、鳥取・島根から流れてくる4名分の比例枠が、現在の比例枠を邪魔しないように定数4増(各選挙区で2増)とするのは論外だ。
既存の比例選出の枠は守る、そして、合区で外された人が確実に当選できるような仕組みを作る、というのが自民党の事情からつくられた「改定案」だ。独自性の確保こそ 選挙制度改革は参院の在り方も含めて議論されるべきである。参院は「良識の府」「再考の府」と言われるが、現実は衆院同様の政党対立が持ち込まれ、「衆院のカーボンコピー」とも揶揄される。
中長期的な視点から議論し、国権の最高機関にふさわしく、独自性を確保できる制度改革としなくてはならない。