ニューヨークでの安倍晋三首相とトランプ米大統領との首脳会談(9月27日)は、TAG(日米物品貿易協定)の交渉入りで合意した。協定は、日米双方の顔を立てた形になっているが、名実ともに日米FTA(自由貿易協定)である。
名称を変えて国民を欺き、平和と農業、環境を犠牲にして工業(自動車、鉄鋼)と大企業・多国籍資本を擁護する暴走政治に怒りを禁じえないが、米国が二度とTPPに復帰しないことも確定した。
トランプ氏の思惑
TAGに関する共同声明は、「日米物品貿易交渉の開始を宣言し、年明けに『本格的に交渉』する。農林水産物の市場アクセスでは、『TPP以上の譲歩をしないという日本の立場を尊重』する。自動車の市場アクセスでは『米自動車産業の米国の製造と雇用の増加を目指すものであるとの米国の立場を尊重』する。日米は『(TAG)協議の間は自動車への追加関税などの行動はとらない』『TAGの議論完了後、他の貿易、投資についても交渉』する」としている。
トランプ氏は名(FTA)捨てて実(日米交渉の開始)を取り、安倍氏は名(TAG)を取り、実(米のTPP復帰)を捨てたと言える。11月中間選挙を控え、トランプ氏には共和党勝利のために成果(日米FTA交渉の実現と日本の農産物関税のTPP並み引下げ確保)を誇示する思惑がある。 安倍氏は、「貿易不均衡の是正に協力しなければ自動車の関税を大幅(現在2・5%の関税を25%まで)
に引き上げる」という脅しに屈し、兵器の大量購入を手土産にあっさり要求を飲んだ。
トランプ氏に、「日本の立場を尊重する」とか、「協議中は関税引上げを行わない」などということが通用しないことは明らかだ。
関税と安保をテコ
なぜ「年明け本格交渉」か、大統領が議会から「貿易促進権限」(TPA)を得る手続きの期間が必要だからだ。
また、年明けに「TPP11」や、「日欧EPA」が発効するかもしれないからだ。これらが発効すると牛肉関税で米は現行38・5%/sだが、豪は26・9%/s(TPP発効後は9%まで下がる)と、米が圧倒的に不利となるからだ。
日米TAG(FTA)交渉で、米は自動車の関税引上げと日米安保をテコに、@牛肉関税のTPP以上の引き下げ、A米輸入枠(7万d)の拡大、BBSE検査の廃止、C遺伝子組み換え食品の自由化、D自動車輸出規制、E自動車販売店網の廃止、F軽自動車の税制優遇制度廃止などを突き付けてくるだろう。
政府・与党は当面、農業や環境・平和を犠牲にする農産物輸入促進、武器購入や9条改憲などを強引に進めるだろう。私たちは命と平和と環境を守るために今まで以上に農産物の自由化に反対し、9条を守り、安倍内閣打倒の炎を大きくしていかねばならない。