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2018.11.06
「民営水道」法案に反対
ライフライン・水道は公営で
  モリ・カケ疑惑、働き方改悪、カジノなどを巡る延長国会の混乱の中で7月5日、水道法改定案が衆院で強行可決された。参院審議は臨時国会で行われるが、法案には「民営水道」という大問題がある。水道は市民の共有財産なのだ。

地方衰退と老朽化
 日本の水道普及率は1950年代に26%だったが、その後の高度経済成長に合わせて60年代には5割を超え、80年代には9割に達し、現在では98%に達している。

 水道事業は、一部の広域水道を除いて市町村が運営責任を持つことになっている。従って大都市以外は経営基盤が弱く、また、職員数も人口1万人の自治体で平均3名程度というのが実態である。

 そうした中で、70年代に集中整備された水道管路が耐用年数を迎え、更新のための設備費用、技術継承を確保することが難しいという問題に直面する。このため、事態克服のために経営基盤の強化を目的に、公営広域連携を目的とした水道法の見直しが検討されてきた。

 しかし、改定法案には「官民連携」なるものが入れ込まれている。その正体は運営権を民間に譲渡する「コンセッション方式」と言われるものである。コンセッション方式とは、公共が施設を所有し、民間が運営する「公設民営化」に他ならない。

 今までもPFI法等に基づいて水道事業を民間に委託することは可能だったが、その場合、地方自治体は水道事業の許可を手放して民間事業者が新たに許可を受けなければならなかった。しかし、これだと災害や事故が発生した時、地方自治体は責任を負えないということになる。そこで、自治体に水道事業許可を残したまま、運営を民間企業に任せられるようにしようというのが改定案の眼目だ。 

いつか来た道再び
 民営化のメリットとして挙げられているのは、市場競争に委ねることによってサービスの提供価格を低く抑えることができるというものだが、大都市部を除いて採算ベースに乗せることは難しい。

 本格化する人口減に伴い、料金収入減も経営を圧迫する。世界一といわれる日本の水道技術は継承できず、多発する自然災害に無防備に立ち向かわなければならなくなる。

 水道は国民の生活のみならず、生命に直結する極めて重要なインフラであり、その維持・管理や運営は、費用負担も含めて本来は国や地方公共団体が担うべきものである。 

世界の方向に逆行
 民営化が先行して行われたイギリスやパリ、ベルリンその他の都市で、続々と「再公営化」が行われている事実を日本国民は知らされていない。なぜ、再公営なのか。利潤の最大化をめざす民営水道は、結果、料金の不透明化・高騰を招き、人員削減に伴うサービスや水質低下を招くからである。

 労働者・市民の闘いが問われている。