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2018.11.13
全世代型社会保障
充実ではなく“解体”の欺瞞
  安倍晋三首相は10月15日の臨時閣議で「消費税率を予定通り、2019年10月から10%に引き上げる」と表明し、「お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換」すると、大見得を切った。しかし、内容は貧弱だ。

 「全世代型の社会保障」という言葉は、「社会保障と税の一体改革」で設置された「社会保障制度改革国民会議」の報告書(13年)に登場する。「日本の社会保障モデルを『1970年代モデル』から『21世紀(2025年)日本モデル』へと転換を図り、全ての世代が年齢ではなく負担能力に応じて負担し支え合う『全世代型の社会保障』を目指すべき」とした。

自民の総選挙公約
 安倍首相は昨年9月28日、臨時国会冒頭に「国難突破解散」として衆議院を解散。「国難」とは「北朝鮮の脅威と少子高齢化」とし、自民党は、「未来を担う子供たちに保育・教育の無償化」を公約、「お年寄りも若者も安心して暮らし、活躍できる『全世代型社会保障』を目指す」とうたった。

 勝利した安倍政権は昨年12月8日、「新しい経済政策パッケージ」を決定、「人づくり革命」を推進するとし、「幼児教育の無償化」「待機児童の解消」「高等教育の無償化」等を掲げた。財源は19年10月からの消費税10%への引き上げ分2%分から捻出するというものだった。

 安倍首相は10 月24 日の所信表明演説で、「全世代型社会保障改革」を掲げ、「子どもから現役世代、お年寄りまで、全ての世代が安心できる社会保障制度へと、今後3年かけて進める」と表明した。新社会党は、消費税引上げには断固反対であり、5%への引き下げを求める。

19年度でも削減! 
 厚生労働省は19年度予算の概算要求では、前年度予算より6000億円多く要求している。18年度の概算要求は6300億円増だったが、5000億円に圧縮された。社会保障費は、高齢化等による自然増が1兆円は必要と想定される。

 しかし、16年度〜18年度の3年間は5000億円増に圧縮された。つまり、残りの5000億円分は政府の負担削減と国民の負担増で賄われているのだ。政府は、来年度予算でも概算要求から1000億円減らし、5000億円以内に圧縮する動きを強めている。 

国民は負担増のみ
 社会保障の国民負担増と給付減は、安倍政権の5年間で約6兆5000億円に上る試算もある。医療で1兆円(診療報酬引下げ、70〜73歳の窓口負担増等)、介護5400億円(介護報酬引下げ、利用料の引上げ等)、年金4兆8000億円(保険料引上げ、マクロ経済スライドの適用等)、生活保護1600億円(保護費の削減)だ。 
 「全ての世代が年齢ではなく負担能力に応じて負担し支え合う」とは、負担は高く・広く、給付は低く・薄くで、それが「全世代型社会保障」の本質だ。