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  4. 2018.12.11
学童保育の基準廃止
児童と働く人に無責任だ
 政府は10月の「内閣府地方分権改革有識者会議の専門部会」で、「学童保育」の職員の配置と資格の基準を事実上廃止する方針を決めた。基準は、15年度から実施されたばかりであり、廃止に保護者や関係者から反対の声が上がっている。

 学童保育は、保護者が就労などで昼間家庭にいない、小学校に就学している児童に放課後、学校の空き教室や児童館などを利用して適切な遊び、生活の場を提供し健全な育成を図るもの。 

やっと質の確保へ
 学童保育が児童福祉法に位置づけられたのは1997年だが、何の設置基準もなかった。07年に「放課後児童クラブガイドライン」が策定され、運営上の基本的な事項が示されたのである。

 具体的な基準の「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」(厚労省令)が策定されたのは14年4月で、質の向上へようやく全国的な一定水準が決まった。

 基準には、「参酌(比べて参考にする)すべき基準」と「従うべき基準」がある。「従うべき基準」は職員配置のみで、@1教室につき、放課後児童支援員を含む2人以上の職員を配置A支援員は保育士や社会福祉士等の資格があり、かつ、都道府県が行う研修を受けた者となっている。他は、設備、児童集団の規模、開所時間、開所日数などは「参酌すべき基準」になっている。

資格のない人でも 
 今回の方針決定は、職員確保に苦しむ地方団体からの要望を受け入れたものである。唯一「従うべき基準」であった職員配置を、基準に従う義務を無くして地方の裁量での運営を可能にする。1教室に職員は1人でもよく、未資格者の配置も可能になる。保護者から「質が低下する」と反対の声が上がったのも当然だ。

 厚労省の「2017年放課後児童健全育成事業の実施状況」によると、放課後児童支援員の総数は13万1336人。

 その内訳は、常勤職員3万5632人(27・1%)、非常勤職員4万4346人(33・8%)、パート・アルバイト3万9607人(30・2%)などである。ほぼ4人に3人は非正規。これでは正規労働者は疲弊するし、非正規労働者は身分の不安定さで集まらない訳である。

 安心できる居場所 全国学童保育連絡協議会の報告によると、18年5月1日現在の学童保育への入所児童数は121万1522人(前年比で4万360人増)で、待機児童数は1万6957人(同150人減)である。政府は9月に定員を19年度から3年間で約25万人増やす目標を発表しているが、国費の投入は経費の3分の1だ。

 いじめ、不登校、虐待など子どもを取り巻く状況は深刻だ。学童保育が、子どもの「安心できる居場所」であるためには、きちんと職員を配置するとともに安心して働き続けられる処遇が求められる。