2018年の世界の出来事を振り返ると、歴史が半世紀単位くらいで新たな段階に入ろうとしているように思われる。格差と貧困の世界的な拡大が政治も経済もすべてを激変させ、階級間の対立は従来とは全く異なった様相を見せ始めた。催涙ガスにかすむパリの映像で、60年代末に高成長終焉とともに起きた労働者と学生の反乱を思い出した。それから世界は長期不況に入り、80年代からは「低成長」に新自由主義のカンフル剤を打ち、米国や日本のバブル景気、EUによる国家間協調で資本主義は息をつないだ。また、ソ連・東欧の崩壊で新自由主義者は「歴史の終焉」と凱歌を上げた。
ところが、「百年に一度の危機」と言われたリーマン・ショックから再び資本主義の容態は深刻になり、金融資本救済のため緊縮を強いられた民衆は、また反抗し始めた。新たな左右対立へ 米国では、民主的な社会主義が若者の期待を集め始め、欧州では「反緊縮」新興左翼勢力が活性化した。一方で排外主義とポピュリズムが急伸、トランプ政権はしぶとく、極右政権が各国に登場した。そして旧来の資本家政党や社民政党は左傾化した英国労働党を除き衰退、各国の政治は激変し、メルケル独政権もマクロン仏政権も追いつめられた。ブレグジットの混迷もありEUは激動する。
新自由主義への民衆の怒りを、反緊縮左翼と右翼ポピュリズムのどちらが組織するか問われる。
安倍長期政権は世界でも異色だが、左派が弱体なために矛盾の激化が左右対立の形態をとらず、総体的な右傾化を許しているに過ぎない。米中が全面的対決 世界を揺るがしているのは米中対決だ。関税戦争の背後には地域覇権だけでなく産業安保、IT軍事技術など全分野の対決がある。トランプの「ディール」を超えた米国の「国家意思」だ。米中対決は、翻って米国による日本の市場開放、貿易黒字削減、兵器の購入要求となる。
朝鮮半島では文在寅政権がある限り緊張緩和は後戻りしない。トランプも歴史的な米朝和解を成果とした方が得策だ。米中対決が影を落とし、米朝首脳の再会談も年内には実現しなかったが、朝鮮半島の民衆の平和への意思は変わりない。野党の立遅れ痛感 安倍政権の姿勢は世界の激動に備える支配階級の意思である。玉城デニー知事の訴えを退けた辺野古新基地建設、入管法改定など国会運営の強硬姿勢、憲法審査会開会を策す執拗さ、米国兵器の大量購入と空母への改修など、激動の世界に軍事力と強権的な政治で備えようとしている。また南北和解を警戒し、徴用工問題などで反韓・排外主義を煽っている。
これらに野党がどう対決するのか、激動する世界への対応が立ち遅れているのではないか。沖縄の健闘に学び、明快な対抗軸を掲げた野党共闘が切望される。