通常国会が開会し、首相の施政方針演説など政府4演説があった。沖縄県民投票、統一自治体選、大阪12区と沖縄3区の衆院補選、天皇即位をはさみ6月26日に閉会の日程だ。7月参院選、10月消費税率引き上げをにらんだ攻防である。
乗り切って改憲へ
施政方針が示すように、政府・与党は対決を避け、消費税率引上げ対策名目のバラマキと幼児教育無償化等が目玉の19年度予算を成立させ、「統計不正」は「お詫びと徹底検証」で逃げ切る算段だ。
政府提出法案は58本に絞り、過去2番目の少なさ。改憲は「各党の議論が深められることを期待」に後退した。
一方、ロシアとの領土問題解決や朝鮮の金正恩委員長との会談の決意披歴で点数を稼ごうとし、また、新防衛大綱・中期防の初年度として「新たな防衛力の構築」を宣言、「全世代型社会保障制度」のための消費税引上げへの理解を求めた。 こうして国会を乗り切り、消費税増税再延期の判断や衆参同日選というカードを手に、秋以降に改憲の最後の勝負に出るとみていい。
第二の消えた年金
野党は、統計不正、改定出入国管理法、辺野古新基地建設などで対決する構えだ。統計不正問題は、毎月勤労統計をもとに給付水準が決まる雇用保険・労災保険などで延べ2015万人が給付不足になった。第二の「消えた年金」問題だ。
他方、18年1月調査からデーター補正を内密に進めた結果、給与調査結果は上振れした。アベノミクスの「成果」をねつ造したのだ。厚労省はあわててデーター補正をして再集計値を発表した役人を処分したが、野党は「幕引き許さぬ」と意気込んでいる。
中身も詰まらぬうちに強行成立させた改定入管法については施政方針演説で全く言及がない。閉会中審査でも制度の細目の説明はない。4月施行前に自治体予算の必要額も不明で、自治体も受け入れ企業にも危惧が広がっている。これも外国人労働者をモノ扱いする政府が糾弾されるべきだ。
辺野古新基地は、軟弱地盤対策で計画変更が浮上した。翁長雄志前知事が軟弱地盤の存在を承認撤回の理由としたにもかかわらず工事を強行してきたが、政府も無理を認めざるを得なくなったのだ。県民投票結果と合わせ、基地建設を中止に追い込む好機だ。
法人税減税分戻せ
野党攻勢の好機だが、消費増税と予算案については明確な対抗軸が打ち出せているとは言えない。消費税は引上げ反対だけでなく5%にして法人税減税分を民衆に戻せと訴え、安倍の「全世代型社会保障制度」の欺まんを暴く迫力は弱い。
予算案は防衛予算の増額が露骨だ。また、徴用工賠償問題、韓国艦「レーダー照射」で嫌韓を煽り、自衛隊機の韓国海軍艦艇への威嚇飛行までする姿勢の追及も、第2回朝米会談が実現しようとするときだけに大事だ。