新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 道しるべ
  4. 2019.05.07
天皇の代替わり
政治利用は絶対に許されない
 4月30日に明仁天皇が退位し、5月1日に徳仁天皇が即位した。4月1日には、新元号「令和」が発表され、マスコミは天皇の話題一色である。私たちは、この機会に憲法上の天皇の位置付けをきちんと理解しておくことが求められる。

 朝日新聞の全国世論調査(4月19日付朝刊)は、「皇室に親しみを持っている」が76%で過去最高と報じた。「新天皇の役割として期待するもの」では、「被災地訪問」「外国訪問・外国の要人との面会」「戦没者への慰霊」の順になっている。

 平成天皇の「象徴として」の行動が、好意的に受け止められている。しかし、問題はないか。

憲法上の位置づけ
 憲法は、第1章を「天皇」とし、第1条から8条で規定している。1条では「象徴天皇について」、2条は「世襲制と皇室典範」について規定する。そして、7条で10項目の「国事行為」を規定している。

 天皇の憲法上の規定は、明治憲法の改正の形式をとっており、戦前との継続性の排除が不徹底(「国体護持」を求めた保守勢力とGHQの占領支配のための天皇利用のため) であり、とりわけ皇室典範は明治憲法の色彩が色濃く残る。

 女系天皇を認めないなど、現憲法の人権原則を逸脱し、名称も「皇室法」とでもすべきであった。

「象徴的行為」とは
 象徴としての天皇の行為は、憲法上の国事行為以外は曖昧であり、そのため、「私的行為」でもない、「公的行為」なるものが生まれた。そして、「象徴としての公的行為」を認め、「その枠からはみ出さない統制を図る」という考え方が一般的になった。

 平成天皇は、日本各地の訪問を「天皇の象徴的行為」と言い、「象徴としての務め」として位置付けた。さらに、「平成の時代は戦争がなかった」(自衛隊のイラク派兵など、戦争に不参加とは言えない)など、平和への言及も多い。

 そのため、安倍政権が憲法「改正」を掲げ、自衛隊の海外派兵を目論む中で、天皇が平和主義者であるかのようなイメージが醸し出されている。しかし、天皇の個人的な思い入れによって、制度としての天皇の政治的行為が拡大されることは問題である。

 主権者の対応こそ 天皇の被災地訪問や慰霊の旅などは、本来、政治がきちんと対応していれば不要だ。それを天皇が肩代わりし、「国民が天皇をおそれ多いと思う戦前以来の感情が消えず、天皇制についての議論ができなくなる」ようであれば深刻な事態、民主主義の危機を招くことになる。

 政治は、主権者たる国民が自らの主体的な責任で解決すべきものであることを銘記すべきだ。一方、安倍政権は元号改正を、マスコミを通じて最大限に利用、政権の支持率引き上げに使っている。天皇の政治的利用は、絶対に許されない。

 ↑上にもどる
一覧へ
トップへ