統一自治体選が終わったばかりだが、地方自治を巡る新たな動きが始まった。それは、「自治体戦略2040構想」に基づくものだ。少子高齢化に苦闘する自治体の努力を無視する内容をはらんでおり、注視することが求められる。
総務省が設置した「自治体戦略2040構想研究会」は、昨年4月に第一次報告、7月3日に第二次報告を出した。内容は、7月5日から始まった第32次地方制度調査会への諮問に引き継がれ、法整備に関する議論の土台になっている。
2040年問題
「構想」は、表題が「人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか」で、「2040年頃にかけて迫りくる我が国の内政上の危機」から始まる。
内政上の危機とは、40年は団塊ジュニア(1971年〜74年生まれ)が65歳に達し、高齢者人口がピークを迎えることを指す。具体的には、@若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏A標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全Bスポンジ化する都市と朽ち果てるインフラの3つ。
職員数は半分に
この間、社会保障対策で「2025年問題」が強調された。それは、団塊世代(1947年〜49年生まれ)が、25年には後期高齢者・75歳に達するという高齢社会危機論だ。これを飛び越えて「2040年危機論」を打ち出した。
「危機」に対応する自治体の課題として、@スマート自治体への転換A公共私による暮らしの維持B圏域マネジメントと二層制の柔軟化C東京圏のプラットフォームを提示する。
@スマート自治体への転換は、自治体業務の自動化・省力化で職員数は半分にするA公共私によるくらしの維持は、公は企画・環境整備を行い、サービス提供は共と私、行政はサービ提供から撤退するB圏域マネジメントと二層制の柔軟化は、現状の広域連携は不十分であり、行政のフルセット主義から脱却し、圏域単位での行政の標準化を図る必要があるとし、圏域を国が指定して中心都市がマネジメントする。
中心都市がないところは県が補完する。C東京圏のプラットフォームは、東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)を圏域全体でマネジメントする。整理すると、以上の内容である。
地制調で異論が
第1回「地制調」では、「2040構想研究会には地方代表が全く入っていない。今地方創生の努力をしており、その検証もできないうちに小規模自治体はやっていけないだろうという議論は問題だ」などの意見が、全国市長会や全国町村会から出された。
総務省は来年の通常国会で法制化を目指しているが、許してはならない。今回の総務省の提案は、安倍政権の「道州制導入」に繋がるものでもある。自治体関係者の研究・検討が求められる。