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  4. 2019.06.11
欧州議会で右派伸長
禁酒強制への怒りが噴出
 5年に一度、EU28カ国から751人の議員を選出する先の欧州議会選では、主流の「中道左右二大会派」が退潮、「EU懐疑派」が伸長と、EUと移民への態度を基軸にした論評が多い。しかし、それだけでは割り切れない結果だ。

移民政策の背後に
 EU主流二大会派(保守政党と社民系政党)は、404→326と過半数を割り、反EUの右派三会派は155→171に増えた。

 だが、親EUの「リベラル中道」(マクロン与党など)が68→109、緑・環境系が52→69へ伸びたため、反EU右派は3分の1ほどに止まった。そこで当面は旧主流と親EU二会派による欧州委員長人事が焦点だと報じられている。

 しかし情勢はもっと複雑だ。欧州議会選の焦点が移民政策とされがちだが、移民排斥の扇動が有効なのは格差・貧困が拡大しているからだ。事実、反EU右派には「反エリート」「反緊縮」ポピュリズムも共通していた。

 今次選挙で5年前の6・2%から34%に躍進した伊の右派「同盟」のサルビーニ副首相は、「エリート対民衆、ロビイスト対労働者、銀行対預金者を巡る国民投票だ」と訴えた。仏のルペンも左派顔負けの「反緊縮」政策を掲げ、マクロン与党21議席を抑え22議席を獲得した。

 EUによる緊縮財政政策の強制への怒りが、「左右中道」の凋落と反EU右翼の伸長の主因なのだ。親EU「リベラル中道」会派が浮上したが、その中心は黄色いベストの糾弾対象・マクロン与党で、ルペンの後塵を拝し得票率22%強でしかない。旧来のEU主流と同類だ。


左派はなお模索中
 しかし、肝心の左派はバラバラで右派の勢いに敗けている。鮮明に「反緊縮」を掲げる会派「欧州統一左派・北方緑左派」は52議席から39 議席に後退した。中心だったギリシャの政権党シリザはEUの圧力で緊縮路線に傾斜し、得票24%で第二党に転落。スペインのポデモス、独の左翼党も減らした。

 ただ「反緊縮」左派は「統一左翼」会派だけではない。独ではCDU・SPD連立政権への批判がSPDの壊滅的後退に示され、「緑」が11から21議席へ第二党に躍進した。右翼AfDは7から11議席に止まり、左翼党は7から5議席に後退した。

 独の「緑」は緊縮路線に批判的でベーシック・インカムも提唱するなど格差・貧困政策も意欲的で、社民党批判の受け皿となり、左翼党も割を食ったようだ。

 スペインのポデモスも6議席と半減、社会労働党が20議席へと伸長。緊縮路線を採っていた社会労働党政権が行き詰まり、4年前に急伸したポデモスと連立を組んで緊縮政策を転換して支持が戻った。独と同様新興右翼のヴォクスは3議席と伸びなかった。コービンの英労働党も10議席へ半減したが、EU離脱を巡る特殊事情のためだ。

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