トランプ米大統領から仲介を依頼された安倍晋三首相は、6月12日から14日にイランを訪問したが、ここでも成果なく終わった。そもそも、説得すべきはトランプ氏であり、米の核合意離脱からの復帰と制裁の解除、軍事的脅迫の撤回だ。
いつでも武力行使
イランは、核兵器開発を2000年代に着手し、国連安保理は06年に制裁決議を可決。13年にイランは濃縮ウランの生産を停止。安保理常任理事国とドイツはイランと核開発停止を合意し、国交は正常化に向かう。
だが、18年にトランプ大統領はイランのミサイル開発を理由に核合意から突如離脱し、石油産業を中心に制裁を再開した。米国は経済制裁に加え5月11日に空母打撃群とB52戦略爆撃機などの特別部隊に加え、パトリオットミサイル部隊などを増強した。
その理由を「イランが米軍と米国の国益に対する攻勢作戦を実施する兆候が強まった」とした。トランプ大統領は対話を口にしつつ、「武力行使の可能性」に常に言及してきた。
米による先制攻撃
2001年9月の米国への同時テロ事件を契機に、米国は03年3月にイラクに先制攻撃の空爆を仕掛けた。その主な理由は「大量破壊兵器」の保有だった。だが、大量破壊兵器はなく、戦争のためのウソ。ねつ造情報であった。
イラク戦争を始めた米国は、日本に「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」と、多額の戦費負担から一歩踏み込んで、多国籍軍への地上部隊の派遣を要請した。そのため、日本はイラク特措法で多国籍軍の兵員、武器、弾薬など物資を空中輸送するなど、後方支援(兵站)を行い、戦争に事実上参加した。これを契機に、日本は米国の軍事戦略に完全に組み込まれた。
「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領が国益のため、仮にイランに先制攻撃をかけたら、日本は確実に米軍の戦争にこれまで以上に加担することになる。
戦争法で様変わり
特に15年9月に安倍自公政権によって強行された安全保障、関連法(戦争法)で自衛隊は「専守防衛」の枠踏み破って集団的自衛権行使が可能となった。自衛隊法の一部を改定した、いわゆる「平和安全法制」により、日本領域外での武器の使用や米艦防御が可能とされた。
米艦や米航空機の米軍防護は、17年の2件にから18年には8倍の16 件に達している。また、安倍政権が昨年末に決定した新防衛大綱・新中期防によって空母保有や米国製ステルス戦闘機F35Aの導入など、自衛隊の兵器体系より攻撃的となっている。
13日には日本のタンカーを含む2隻がオマーン湾で被弾、軍事的緊張は高まっている。安倍政権はトランプ外交に追随せず、憲法前文と9条の精神に則った平和外交こそ、日本の国民と真の国益を守る道であることを肝に銘じるべきだ。