中央最賃審小委は7月31日、19年度の地域別最低賃金を全国平均で時給を27円引き上げ、901円とする目安をまとめた。地方最賃審は、目安を基に8月9日までに都道府県ごとの最賃額を決めている。最賃を巡っては、課題が多い。
「目安」の問題点
「目安」通りに上がると、東京1013円、神奈川1011円と、初めて1000円を超える。しかし、加重平均の901円を超えるのは、埼玉、千葉、愛知、大阪を加えて6都府県に過ぎない。
しかも、800円に満たないDランクが17県もあり、最高の東京と最低の鹿児島787円の格差は、226円(昨年224円)と拡大した。
中央最賃審開催日の7月30日、会場前で最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会、全労協、全労連などが「地域間格差をなくし全国一律最賃の実現を!いますぐどこでも最低賃金時給1500円を!」と集会を開いた。しかし、審議会は傍聴要求を拒否、非公開で開かれた。
強まる改善の動き
参院選を前にした5月29日には市民連合と立憲野党が、「地域間の大きな格差を是正しつつ最低賃金『1500円』を目指し、8時間働けば暮らせる働くルールを実現」を確認した。そして、参院選では、立憲民主1300円、国民民主1000円、共産・社民・れいわは1500円を掲げた。
また自民党内に2月、「最低賃金一元化推進議員連盟」(会長=衛藤征士郎衆院議員)が発足した。衛藤氏は、1975年当時の野党4党が提出した全国一律最賃法案に触れ、「残念ながら審議未了で廃案になった」と述べ、「最低賃金の一元化が必要。全国一律とすることは基本的人権に資する」と挨拶したという。
議連には稲田朋美、下村博文衆院議員らうさん臭い議員もいるが、地方を選挙区にする人が多い。「骨太の方針」でも、「より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す」と掲げる。
議連の狙いは、「疲弊する地方経済の再生とデフレの完全脱却」で、労働者の人権保障ではない。しかし、彼らも全国一律最賃を語らざるを得なくなったのだ。
最賃法抜本改正を
日本の最低賃金は、「鹿児島の787円だ」と言うべきだろう。東京と鹿児島の格差は、年1800時間労働とすると40万円強となる。そのため、当面は地域間格差の是正を優先すべきだ。しかし、最賃法は、中央最賃審の目安を受け、地方最賃審で決めることになっている。全国一律最賃に法改正する必要がある。
また、08年改正では、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮する」と謳ったが、「通常の事業の賃金支払能力を考慮」と規定する。
最賃には、ナショナルミニマムの考えを入れ込んだ水準設定をすることを法定化すべきである。