厚労省は9月6日、「平成29年所得再分配調査」結果を公表した。「ジニ係数は、前回(26年)と比べてほぼ横ばいで推移」としているが、企業の内部留保が463兆円(本紙9月24日号「経済監視塔」参照)と増える中、格差は高止まりだ。
所得再分配調査は、「社会保障制度における給付と負担、税制度における負担が所得の分配にどのように影響を与えているかを明らかにし、社会保障施策の浸透状況、影響度を調査し、今後における施策立案の基礎資料を得ることを目的」とする。この調査は、昭和37(1962)年度以降、概ね3年に一度行っており、今回で18回目。
調査は17年7月13日から8月12日の1カ月間行い、調査事項は16年1月1日から12月31日までの状況を基本に調査している。調査員が配布、回収する方式(留置自計方式)で、調査票は8645世帯に配布、回収は6662世帯、集計利用世帯は4414世帯(51・5%)となっている。
所得分布示す指標
所得などの分布の均等度を示す指標として、最もよく用いられるのに「ジニ係数」があり、所得再分配調査でもジニ係数を出している(ジニ係数の出し方は略)。ジニ係数は、0から1の値で示され、0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど大きい。
今回の調査の平均当初所得額は年額429・2万円(前回比9・3%増)、平均再分配所得は499・9万円(前回比3・7%増) である。再配分後のジニ係数は0・3721で、前回調査より0・0038ポイント低下し、ジニ係数でみた格差は拡大していないことになる。
当初所得のジニ係数は0・5594で、前回調査より0・0110ポイント低下した。再分配による改善度は33・5%で、前回より0・6ポイント低下している。報告書は、社会保障・税の再分配機能に一定の効果がある結果になっているとしているが、再分配による改善度が低下したのは、年金給付へのマクロ経済スライドの発動の影響だ。
(当初所得=ほとんどの所得を含むが、公的年金などの社会保障給付は含まない。再分配所得=当初所得から税金、社会保険料を控除し、社会保障給付を加えたもの)
世帯員単位の係数
世帯単位のジニ係数は、等価所得で出している。今回調査では、等価当初所得のジニ係数は0・4795に対して、等価再配分後のジニ係数は0・3 1
1 9で、所得再分配によるジニ係数の改善度は35・0%になっている。世帯単位同様、改善はない。(等価所得=世帯の所得を世帯人員の平方根で割ったもの)
高い日本のジニ係数
ジニ係数の国別ランキング(主要42カ国の16年の直近データ)では、日本は格差が大きい方から数えて18位。貧困・格差の改善は、引き続き日本政治の重要課題に位置付けなければならない。