安倍内閣が、TAG交渉(日米物品貿易交渉)とごまかしてきた日米FTA交渉(日米自由貿易交渉)が9月26日に合意した。安倍晋三首相は今臨時国会で協定書の批准をめざすというが、「食料主権」を放棄する合意はノー!だ。
安倍首相とトランプ米大統領は「協定書」に署名した。安倍政権は、米の要求を「TPP11水準にさせた」とか、「米国産の米輸入枠7万dを除外できた」とか、「成果」を振りまいているが、ウソだ。
なぜなら今後、米が再交渉を要求してくることは間違いないし、TPP交渉で約束されていた「自動車輸出関税2・5%の撤廃」も先送りされているからだ。つまり、米はTPP以上の成果を得るための最大の武器を温存しつつ、いつでも再交渉に持ち込める状況を確保したということである。
国民に譲歩のツケ
今回の合意は、大統領選を控えて見える成果が欲しかったトランプ氏と「外交のアベ」を誇示(トウモロコシの爆買い275万d)したかった安倍首相とのできレース以外の何物でもない。いずれにせよツケは日本の農漁民と農林漁業に、そして食料自給率の低下として国民に重くのしかかってくることは間違いない。
自給率過去最低に
農水省は8月、18年度の食料自給率(カロリー)が過去最低の37 %に下がったことを明らかにした。原因は天候不順による農業生産の減少にあるという。
しかし、1960年に79%あった自給率が下がり続ける理由は、明らかにTPP11や日欧EPAなど農産物自由化の促進と、それによる離農・脱農の拡大や後継者不足、耕作放棄地(42万ha)の拡大など農業生産基盤の弱体化にあることは明らかだ。
とりわけ、山林面積が70%以上を占める中山間地域で深刻だ。農地・農業産出額の4割を占める中山間地農業の崩壊は著しい農業衰退、環境破壊、食料自給率の低下を引き起こすからである。ちなみにこの15年間に農家は97万戸、農業就業人口は180万人減少している。
食料は農薬漬けに
食料自給率の低下は、農薬漬けの輸入農産物及び食品に頼ることになる。それは癌やアトピー性皮膚炎、アレルギー患者急増の要因といわれ、国民の命と健康を犠牲にする事態を引き起こしている。また、外国に国民の生殺与奪権を握られることを意味し、食料安全保障上の危機を招いている。
さらに、農産物価格の高騰も招いている。地球人口の増加や途上国の発展で世界の食料消費は拡大する一方だが、食料生産がついていけないからだ。その結果、8億の飢餓難民など食料を本当に必要としている国や地域の人々を飢えさせてしまう飢餓輸出が発生している。
生命と健康を守り、飢餓輸出をしないためにも、食料主権を高く掲げて日本農業を再建していかなければならない。