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  4. 2019.11.12
米国への義理立て
姑息で危険な「忖度」派兵
 安倍内閣は、米国の対イラン有志連合構想に呼応、ジブチの自衛隊に加え中東海域への護衛艦派遣を準備中だ。「独自に」と言うが米国主導の対イラン軍事圧力への事実上の加担で、自衛隊の海外での行動を恣意的に拡大する危険な道だ。

 安倍首相は10月18日、自衛隊の中東派兵検討を指示。「有志連合に参加せず、海域はペルシア湾・ホルムズ海峡を除きオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾、バベルマンデブ海峡東側の紅海」、根拠は国会承認も不要な防衛省設置法の「調査・研究」という。

 「調査・研究」は01年の自衛艦による米空母護衛にも用いられたし、アデン湾や紅海はジブチの自衛隊が日常的に監視しており、姑息な口実にすぎない。与党内からも異論が出るほどだ。 

危機の主因は米
 今回の危機は、イランと米英仏独中ロの「核合意」(15年、安保理も承認)からトランプ政権が昨年一方的に離脱、制裁を強化したことが原因だ。イランを“ならず者国家”とする米国は、各国の調停も拒否した。原油の全面禁輸も世界に強制中だ。さらに、今春のタンカー攻撃事件を機にイランへの軍事圧力を強め、7月に各国に「タンカー護衛の有志連合」を提唱した。

複雑化する事態
 一連の攻撃では犯人も確定せず、紅海でイランのタンカーが、またイエメン内戦がらみでサウジのタンカーや石油施設が攻撃され、イスラエルがイラン攻撃を呼号など複雑化している。

 これら海域では01年以来、米軍主導の合同任務部隊(CTF)が三つも活動、自衛隊も参加してきた。今回の有志連合構想は、単独では対イラン作戦をしたくない米国による「多国籍軍」づくりだ。

 米軍の最初の説明会には約60カ国が出席したが、回を重ねるにつれて数が減り、これまでの参加表明は英・豪・サウジとUAEだけで、他に3カ国が司令部要員派遣を検討中。これら諸国も“米国への義理立て”の色が濃い。

平和解決に逆行
 安倍内閣は米国に忖度し自衛隊を送る方針の一方で原油供給国イランにも配慮し、有志連合に「不参加」としたが、軍艦派遣で「情勢の安定化」など暴論だ。

 ところが、ジブチの海自の護衛艦1隻と哨戒機2機の任務は「海賊対処」で、中東での船舶護衛に適用できる法律はない(海賊は激減でも基地は恒久化へ!)。

 そのため政府は、新たな護衛艦派遣画策、日本関係船舶が攻撃されたら自衛隊法の「海上警備行動発令も」と答弁。その場合の武器使用は警職法が準用されるが、実態は「軍艦による交戦」=武力行使・戦闘となる。

 こうして、安倍内閣の方針は、米国の意向や状況の推移で武力衝突となりうる海域に派兵し、それを名目や法解釈で糊塗するもので、平和解決に逆行するだけだ。断じて中東派兵はすべきではない。
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