東海第二原発(茨城県)の再稼働をめざす日本原子力発電(東京)に、東京電力が2千2百億円も支援することを決めた。再稼働に必要な安全対策費などが膨らんだためと原電は大手電力に総額3千5百億円の支援を求めている。
これは三重に問題だ。第一に、この原発は9年前に被災し、過酷事故寸前までいった前科がある。
全電源が壊滅寸前
2011年3月11日の東日本大震災では原子炉が自動停止した。常用の外部電源も自動停止し、非常用ディーゼル発電機3台を起動して運転に必要な電源を確保したが、津波によってディーゼル発電機用海水ポンプが故障したため、ディーゼル発電機2台で原子炉冷却に必要な電源を確保した。
その後、外部電源が回復し、3月15日に原子炉水温が100℃未満の冷温停止状態となった。その間の注水と、水蒸気を逃すための弁操作の綱渡りの繰り返しで、冷温停止までにかかった時間も通常の2倍以上だった。高さ6・1mの防波壁に到達した波の高さは5・4mで、もう少し高かったら、すべての電源が壊滅し、福島第一と同じ状態になっていたと推察される。
日本原電は「(冷却機能がすべて失われた)福島第一の事態になった可能性は否定できない」としている。東電と同じ沸騰水型で、しかも運転開始から41年もたっており、廃炉とすべき老朽原発だ。
自治体同意を無視
第二に、関東地方には4千万人が、30キロ圏内には百万人が居住しており、そればかりか、もし大事故が起きれば、福島県民に二重の深刻な被害をもたらす。再稼働には新協定によって、30キロ圏内水戸市など6市村の同意が必要となっている。これらのことを無視して再稼働を前提にした工事を進めるのは、人間の命と尊厳を踏みにじっているというほかはない。
旧経営者に「無罪
第三に、原電は9電力の出資で作られ、最大株主は東電ホールディングスで、東電の事実上の子会社。ここで発電し、電力需要の大きい関東地区に売りさばくことができるのは大きな魅力だ。
また、東電柏崎刈羽原発の再稼働には新潟県民の抵抗が強い。その再稼働に弾みをつけるためにも原電の沸騰水型原発を再稼働させたいというのが本音だ。
福島原発事故の刑事裁判で東京地裁は東電の旧経営者を無罪にした。
02年に国の地震調査研究本部が「長期評価」を公表、福島沖でM8・2級の津波地震の可能性を指摘していた。これから試算された「最大15・7m」の津波の可能性を経営者は知りえていたのに、東京地裁は改善措置を怠ったままの運転をとがめずに、旧経営者を無罪とした。
多くの人間の命よりも独占資本の利潤を上に置く論理である。安倍政権もこの論理に立っている。我々はこれを許すわけにはいかない。