与野党対決で注目された高知県知事選は、野党共闘の実を上げ、今後の闘いに大きな教訓とともに反省点も残した。短期決戦だったが、新社会党を含む5野党の統一候補・松本顕治氏の闘いを振り返り、今後の闘いの方向を探りたい。
共闘の前進・深化
高知県知事選は、新社会党の岡ア宏美党委員長や55人の野党国会議員らが応援に駆け付け、野党共闘の本気度を示した闘いであった。
現地では、これまでの野党共闘にはなかった共同選対本部が設置され、県内各地区にも共同選対をつくるまでに「野党と市民」の共闘と共同を深化させ、これからの共闘の発展につながる財産をつくることができた。
しかし、過去二番目に低い投票率(47・67%)の中で、松本氏は自身が闘った今夏の参院選より得票数を微減させた。低投票率だったことを含め、野党共闘に対する県民の厳しい審判であったことを直視しなければならないと考える。言うまでもなく、県政を担う知事選と国政選挙では有権者の意識が大きく異なることも前提ではあるが。
今回の高知県知事選で野党は、「埼玉、岩手の知事選での二連勝を足がかりに、次の衆院選に向けて、野党共闘の前進を期した」選挙という位置づけだった。松本陣営は、「安倍政権の言いなりではなく、高知のことは高知で決める県政へ」と訴えたが、国政の代理選挙という空気を克服できなかった。
事実、自公陣営は前任知事の後継指名を受けた官僚候補であり、前任者は2期にわたり無投票で信任されてきたことを考えれば、急に「安倍政権の言いなり」と言われても、県民には戸惑いがあったのは当然だろう。
前任の尾崎県政は、選挙中の報道機関の調査では9割の信任を受けていたという。有権者は、尾崎県政の「継承か中断か」と主張した自公候補を選んだ。
野党共闘への模索
それでも松本陣営は善戦健闘した。35歳の若い共産党籍の候補者が、得票率で4割を獲得したのは野党共闘が実現したからの成果である。
知事選告示後の11月19日、中央で「立憲野党と市民連合の意見交換会」が行われた。市民連合は夏の参院選に当って、「13項目の共通政策」を提示し、野党各党から賛同を得た。次期衆院選に向けて野党共闘のより発展・深化が必要であることは共通認識になっている。
しかし、「消費税5%」を巡っても一致できていない現実があり、国民の野党政権への期待を大きく膨らますことは難しいことも予想される。それでも立憲野党は、候補者の一本化や政権交代に向けた努力を活発化させなければならない。
そのために立憲野党は、これまでの国政選挙の常識にとらわれず、選挙を闘う母体と既存の政党の分離など、小選挙区比例並立制下での柔軟な戦術が求められている。