秋元司衆院議員の逮捕が端緒のカジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る贈収賄事件は、腐敗の底深さを見せつける。捜査を尻目に安倍内閣は1月7日、「カジノ管理委」を発足させた。まず事件の全容解明、次にカジノ法廃止だ。
金まみれ露呈する
秋元氏は衆院内閣委員長としてIR法案を強行し、事業を担当する内閣府の副大臣を務めた。また、贈賄側が賄賂を贈ったと証言している自民党などの国会議員も大開発となるIR事業と何らかの関係を持っており、汚職の発覚で金まみれのカジノの本質が露呈している。
そもそも胴元が儲かり、博打(ばくち)打ちは損をするのが賭博だ。ギャンブル依存症は借金地獄、失業、自殺や犯罪といった悲劇を生み、一度きりの人生を狂わせ、無数の悲劇を生んできた。
カジノはギャンブル依存症患者を増やし、不正な資金の洗浄(マネー・ロンダリング)の温床になることが懸念され、賭博を禁じた刑法を事実上廃止に追い込むことになる。
日弁連は2014年の「意見書」で、ギャンブル依存症を「慢性、進行性、難治性で、放置すれば自殺に至ることもあるという極めて重篤な疾病」と規定、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響などカジノが社会に流す害毒を指摘する。
「いったん発症したギャンブル依存症への対策は非常に困難であり、むしろギャンブル依存症の患者を新たに発生させない取組みこそが重要」とも強調する。
ギャンブル依存症
ギャンブル依存症の疑いのある日本人は成人の4・8%(536万人)に上るという衝撃的な数字がある。厚労省研究班が14年に行った調査で明らかになった。男性に限れば8・7%(438万人)に達する。日本の4・8%という数字は、米国(02年)1・58%、香港(01年)1・8%、韓国(06年)0・8%と比較して際立って高いことが分かる。
全国各地の人口の多い町の駅前には必ずと言っていいほどパチンコ店があり、それに競馬、競輪、競艇の公営ギャンブルと日本にはギャンブルが溢れている。それらが生みだすギャンブル依存症の全体像を明らかにし、その対策を講じることこそ緊急の課題というべきだ。
「成長戦略」の柱?
ところが、安倍政権はカジノを「成長戦略の柱」と位置づけ、解禁を強行した。しかも、カジノ業者が客に掛け金を貸せるようにする「貸し金業務」の解禁までやってのけた。延滞金利は14・6%もの高利で、依存症患者に悪質サラ金が群がる状態を国が公認するというのだ。
立憲民主党など野党4党は国会開会日の1月20日、カジノを含むIR実施法の廃止法案を提出し、論戦を通じて事件の全容解明とカジノ廃止へ闘う構えだ。その闘いを支持し、新社会党も共に闘う決意を表明する。