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2020.01.28
首相の施政方針演説
疑惑に触れず、空疎な絶叫
 安倍首相の施政方針演説が1月20日行われた。「桜を見る会」「IR汚職」などについて全く言及せず、目玉とする「全世代型社会保障改革」と改憲は「無難」にすませ、オリンピック、地方創生、イノベーション投資などに多くを割いた。

 安倍首相は、昨年末から「任期中の総仕上げ」として改憲とともに「全世代型社会保障改革」を二大課題とぶち上げていた。そして今国会には厚生年金適用拡大と高齢者年金受給の柔軟化を柱とする年金関連法案など、秋の臨時国会には75歳以上高齢者の医療費負担増の医療関連法案を提出することにしている。

総選挙を意識して
 しかし、演説では「75歳以上の医療費窓口2割負担の検討をお願いする」などと慎重な言い回しで短時間で終えた。

 法案内容も演説も秋の臨時国会での解散総選挙を意識し、高齢者をはじめ負担増になる「社会保障改革」の本音は封印した。しかし、審議での与党議員の質疑やメディアを通じて「長期債務1100兆円」の削減を名目に、「高齢者の応能負担増」を突破口に「給付抑制と負担増」および「消費税率10%超」の世論を醸成し、総選挙後を用意するだろう。

 首相は「税収は過去最高となり、公債発行は8年連続減となった」と述べた。20年度予算は消費税が税収の最大項目となり、減税された法人税の1・8倍となって税収が増加したのである。政権の手柄と吹聴するのにはあきれる。消費税増税が個人消費を低迷させ、デフレ脱却も全く進まない問題には一切触れない。

 都合の悪いことはほとんどスルーした。主要2閣僚辞任、「桜を見る会」事件、衆院議員逮捕から広がるIR疑獄、公選法違反での捜査など、野党が強ければとっくに内閣総辞職なのに、一言の謝罪すらない。

 中東への自衛隊派遣で閉会中審査したのに言及なし。「戦後最悪の日韓関係」を惹起し、観光や食品産業などに大打撃なのに「国と国の約束を守れ」の一言だけ。

福島の苦悩よそに
 演説の3分の1は東京五輪なども利用した「地方創生」やベンチャー企業育成などの例証に割いたが、「規制緩和」で安全や環境も危うくする国家戦略特区の活用もうかがえる。

 そして聖火が福島のJビレッジから出発するため、今でも単車の通行は禁止されている国道を含め高線量地域の避難を解除し、常磐線を開通させ、「子どもの笑顔」と「福島に大勢の外国観光客を」と声を張り上げた。

 補償を打ち切られ、帰還を強いられる福島県民の苦しみなど念頭にもない。

 前の東京五輪で「日本の姿を世界にくぎ付けにした感動」が、また来るオリンピックで「新しい時代を切り開こう」「国の形の大改革を憲法で」など、末期政権としてこそばゆいからか、水を3回も飲んで絶叫した。今回の演説ほど軽薄なものはなかった。

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