水道施設の所有権を自治体が持ったまま、運営権を民間に売却できる「コンセッション方式」を導入できる改定水道法が昨年10月施行された。宮城県など、「民営化」に踏み出す自治体が現れた。水道民営化は世界の動向に逆行している。
老朽化など問題が
水道事業は、一部の広域水道を除いて市町村が運営責任をもつことになっている。公営水道の普及率は1960年頃には5割だったが、80年代には9割に達し、現在ではほぼ100%になった。
一方、大都市以外は経営基盤が弱く、また、職員数も人口1万人で平均3名程度が実態であり、70年代に集中整備された水道管路の耐用年数を迎え、更新のための設備費用、技術継承を確保することが難しいという問題に直面している。
このため事態克服のために経営基盤の強化を目的に、公営広域連携を目的とした水道法の見直しが検討されてきた。しかし、一昨年の臨時国会での改定で「官民連携」なるものが入れ込まれてしまった。運営権を民間に譲渡する「コンセッション方式」と言われるものである。
自治体の動向様々
さっそく「コンセッション方式」に飛びついたのは、「地方から国を動かす」政策転換の立役者を自認する村井嘉浩宮城県知事である。22年4月スタートをめざす条例改定を賛成多数で可決させた。
村井知事は、「効率化により、今後20年間の総事業費の7%に相当する約247億円を削減し、料金上昇のペースを抑制できる」とする。
静岡県浜松市では昨年4月から「下水道運営」を仏ヴェオリアと日本企業で構成する特別目的会社が運営しており、上水道にも拡大する方針だったが、市民の反対で当面延期となっている。
一方、香川県や岩手県などでは、老朽化問題などにいくつかの自治体がまとまって連携・広域化で打開を図ろうとしている。
世界では水道民営化に対する批判が高まり、再公営化の流れが広がっている。世界の8割を占有する「三大水メジャー」の2つ(ヴェオリ、GDFスエズ)の地元パリでも2010年に再公営化された。
水道施設の所有権は公的なもので自治体にあり、設備投資は自治体がする。運転について民間に委託するが、何か問題が起きた時の責任は自治体側にある。
利潤追求で質低下
しかし、何十年と管理・運営を受託企業が行うわけだから自治体は管理能力を完全に失ってしまう。その結果、経営は不透明になり公金横領や料金値上げが続くことになった。
再公営化の流れは英、独(べルリン)その他、2000年から15年間に37カ国235都市で再公営化がなされたとの報道がある。なぜ再公営化なのか。利潤の最大化をめざす結果、民営水道はサービスや水質低下を招くからである。労働者・市民の闘いが問われている。