3月は、「自殺予防月間」だ。1月に2019年の自殺に関する速報値が公表された。自殺者数は2万人を下回り過去最低、自殺死亡率も過去最少と報告された。しかし、高止まりのままである。
厚労省は1月、「2019年の自殺統計(速報値)」を公表した。自殺者数は1万9959人(男1万3937人で69・8%、女6022人で30・2%)で統計開始以来最低を更新し、人口10万人当りの自殺数である自殺死亡率も15・8で過去最少という。
14年間3万人超
日本の自殺統計は、1978年に始まった。96年発足の橋本内閣の「構造改革」と、97年の消費税3%から5%への引上げなどの影響で、98年に3万人を超え、それ以降、2003年の3万4427人を最高に、11年までの14年間3万人を超えた。
06年制定の「自殺対策基本法」も、実効性はなかった。12年にようやく2万人台、19年は2万人を切りそうだ(確定値は3月末の予定)。
速報値で最多は東京2107人、以下大阪1191人、埼玉1100人、愛知1062人、神奈川1057人の順。少ないのは鳥取80人、島根109人、徳島113人、福井123人、香川・佐賀149人と続く。自殺死亡率は山梨の22・3を最高に秋田21・9、岩手21・7の順。低いのは神奈川11・5、京都12・4、大阪13・5。山梨は神奈川の1・9倍。
半数超の無職者
速報値に年齢や原因はないので18年のデータで見ると、年代別は50歳代、40歳代、60歳代の順で家計の支え手である男性が多い。職業別では無職者、被雇用者・勤め人、自営業・家族従業者、学生生徒の順で、無職者が半数超だ。
原因・動機別では、健康、不詳、経済・生活、家庭、勤務の順で、健康問題が半数を占め、高齢者が多い。無職者が多いのは、失業が背景にあると考えられる。
経済・生活問題では、低賃金や生活保護などの社会保障施策に繋がっていないことが想定される。勤務問題では、長時間労働による過労自殺やセクハラ・パワハラの原因が見て取れる。データでは、子どもの自殺や親子心中などの詳細は読み取れないが、一定数存在するだろう。
焦眉の支援強化
政府は17年に「自殺総合対策大綱」を改定、自殺死亡率を先進国並みの13・0以下にする目標を掲げるが、15・8だ。自治体やNPO法人などのきめ細かい取組み、それらへの政府の財政を含む支援の強化が求められる。