原発の建設・稼働を巡り巨額の不正金品が役員・幹部に還流する事件を起こした関西電力は3月30日、「業務改善計画」を発表したが、腐敗の元となった原発をそのままにして「改善」はない。
共同通信の取材で
関電の役員・幹部が、福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取っていたことは19年9月、共同通信の配信で明らかになった。金品授受は、18年1月の国税調査で明らかになり、社内調査委が18年9月にまとめ、19年10月に公表した報告書に記されている。
事件が明らかになるまでには数次の内部告発があり、その内容は関電内部の者しか知ることのできない事実が記されていたという。利害関係者やマスコミ、国税、大阪地検特捜部などに送られていたにもかかわらず、その時点では何も起きなかった。
原発マネー還流が事件となるのは、独自取材で事実を究明した共同通信の配信を待たなければならなかった。共同の配信で怒涛の取材と報道が始まったが、共同通信は内部告発先には入っていなかったというのだ。
関電は、報道翌日の9月27日に開いた記者会見で金品を受領した役員の名前すら明らかにせず、記者会見は紛糾した。10月2日の記者会見で内部報告書の内容を明らかにしたが、事件の内容もさることながら、関電の隠ぺい体質はあきれるばかりだ。
役員報酬を穴埋め
その後、第三者委員会の最終報告書(3月14日)が役員ら75人に原発マネー3億6千万円が還流したことなどを明らかにした。2010年代に電気料金を値上げする代わりに削減した役員報酬について退任した役員18人に穴埋めし、その額は2億6千万円との記載もある。一般社員に削減分の穴埋めはなかった。
役員報酬の穴埋めについては、関電の原発マネー不正還流を告発する会が、八木誠前会長らを業務上横領罪、特別背任罪で追加告発する。
3月30日に公表された業務改善計画には社外取締役の権限を強化することなどが盛り込まれ、前経団連会長の榊原定征氏が6月の株主総会で会長に就任する。
榊原氏は3月30日、大阪・中之島の関電本社で開いた記者会見で「日本全体の電源構成として20〜22%の原発の稼働が必要だ」と述べている。
だが、不正マネーの還流は原発の建設・運転を巡って起きたのであり、原発をそのままにして「再発防止・関電再生」はあり得ない。