自民党支持層もかつては、海外に出ていく軍隊は作らないという勢力が圧倒的だった。
日本遺族会はかつて自民党の最大の支持母体の1つだったが、海外に出て行くことには反対。ところが、日本遺族会は小さくなって戦争を知る世代が少なくなり、海外に進出した企業を守るのは当たり前というように支持層が変わってきた。
日米安保条約の下、対ソ連で北海道、対アジアで沖縄が大きな犠牲を強いられながら解釈改憲でやってきた。その間、米国はベトナム戦争などで徐々に力を落とす。そこで、日本は「思いやり予算」を増やしていく。「ジャパンアズナンバーワン」と高度成長で儲けている間に米国は国力を落としていく。
ところが、情勢は大きく変わる。1985年の「プラザ合意」で円高を容認する。85年は1ドル240円だったが、87年には120円、倍になる。たった1年半の間に日本の労働者の賃金は国際価格で倍になった。反対に輸出する車は倍になり、売れなくなった。
日本国内で作っている以上は、もうどうにもならない。日本の資本が選択したのは海外進出。日本の製造業は怒涛のごとく海外に進出した。90年には80万人が海外に常駐した。今は1・5倍の120万人になっている。
そこで米国は、「軍隊を海外に置いているのは米国の資本を守るため。日本は80万人も出していて、ただ乗りする気か」と。冷戦崩壊とともに国際貢献・日本も海外で血を流せという圧力が強まる。
社会主義崩壊とともに日米安保が変質、思いやり予算で済んでいたのが、湾岸戦争が起き、金だけでは済まないとPKOが始まる。そして、13年1月の「日揮事件」では「邦人を守れ」となった。邦人ではなく、本当は企業を守れだ。
TPPは、「アジアの成長を取り込む」という。つまり、アジア市場の利益はオレたちが頂くということ。そこで、「みんなで食うならみんなで守らなくては」となる。
安倍首相があちこちに行っているが、トータルソルーション、社会インフラを日本の企業が全部食うんだ、鉄道、水資源、原発、橋、港湾、国家が保険をかけて企業をバックアップする。失敗したら国民の税金で、成功したらあんたの懐に。
こういう中で、憲法9条は桎梏になってきた。昔のように最初から露骨に軍隊が出ていくことはしない。門戸開放・機会均等、米国と一緒になって市場を守るという話になる。
だから、なんとしても憲法を変えたい。姑息に96条から変えようとしたが、できない。そこで、「集団的自衛権で」となりふり構わずだ。それをバックアップするために、特定秘密保護法や日本版NSC、次から次にやっていこうとしている。
米国が日本に与え、第二次大戦の悲惨な経験から得たパシフィズム(絶対平和主義)の理想主義をすべて振り捨て、米国と一緒にアジアを食うんだから、なりふり構わずやろうということだ。
12年末の衆院選も、13年夏の参院選も、自民党が支持されたわけではない。あまりにも民主党がひどかった。自民党がダメだからもう一つの選択肢があると思ったのに、もっとひどかった。
日本の大企業が外国に行って利益を得る、それならそれなりの負担をせよと米国は言い、安倍首相は「そうします」と言う。それが9条が置かれている状況だ。
国民を幸せにするための政治をすべきなのに、大企業と米国の利益を守ってどうするんだ。明らかに国益ではない。だから、我々としては、この国とこの国の子孫に何を残さなければならないのかということを考えなくてはならない。
|