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 2014.04.08
共謀罪の危険性(上)
侵害なければ罰せず 近代刑法の原則を否定
関東学院大法学部教授 足立昌勝さんの講演



 昨年秋の臨時国会で「何が秘密?それは秘密」の特定秘密保護法が強行されたが、今年の秋の臨時国会には「共謀罪法案」が提出される危険性が高まっている。国民の反対で過去3回廃案になった希代の悪法は、盗聴法の拡大とともに秘密保護法に盛り込まれている。日弁連が去る2月12日に衆院第二議員会館で開いた「共謀罪創設反対を求める院内学習会」での足立昌勝・関東学院大教授(刑法)の講演を中心に2回連載する。なお、日弁連役員の肩書は当時。


 共謀罪法案は、市民社会、刑法の体系そのものを変えてしまう危険な法案だ。断固として闘わなくてはならない。今の政治状況ではいったん出ると成立してしまう危険性が非常に高い。
 そもそも日本で共謀行為そのものを処罰の対象としている法律は3つ。1つは、明治17(1884)年の爆発物取締り罰則に共謀処罰規定がある。2つ目は自衛隊法122条4項の共謀処罰、そして今回の特定秘密保護法の共謀処罰、この3つが共謀行為の単独処罰だ。
 特定秘密保護法で特定秘密漏示罪・取得罪の共謀罪も5年以下の懲役で処罰の対象、提供された特定秘密漏示罪の共謀も3年以下の懲役で処罰の対象とされた。秘密保護法が成立したことで自民党筋から「次は共謀罪を成立させなくてはならない」という声が上がっている。
 その特定秘密保護法の模範となった法律が2001年に改正された「自衛隊法」だ。自衛隊法96条2で「防衛秘密」という概念を創設した。そして、122条で「防衛秘密漏示罪」、122条4項で「共謀処罰」を認めた。防衛秘密漏示罪は5年以下の懲役であり、これの共謀罪は3年以下の懲役とされた。


 近代刑法の基本原則は、社会に与えた損害がない限り処罰されることはない。これを行為主義と言おうが、侵害性原則と言おうが、同じこと。ミラノのチェガレ・ベッカリーアが1764年に書いた『犯罪と刑罰』で「犯罪の尺度は社会に与えた損害である」と言っている。「思想は税を免ぜられる」、つまり、考えていることは処罰されることはない、考えることは自由ということだ。@思考し、その考えに基づいて準備する、Aそして、実行を始める、Bところが、何かの都合で実行が完成しなかった、Cうまくいって結果が発生したという4つの段階に別けて考える。


 結果が発生すれば既遂(社会の侵害は起きたから処罰は原則)。実行に着手したが、結果が発生しなかった場合は未遂(社会を侵害していないが、放っておけば社会を侵害したであろう危険性が非常に高くなるので、特別な法律で定められている場合には、刑法43条で構成用件で規定されていれば未遂罪で処罰される)。
 準備の段階は実行にも着手していないので社会は全く侵害していない。しかし、特別大きな法益、たとえば殺人罪には特別に「予備罪」が規定されている。重大な法益に対する準備行為は予備罪として処罰される。しかし、何をしているか分からない。つまり考えているだけのことは外に侵害を与えっこない。従って思考は何も処罰されない。


 臨時国会に法案提出も


 日弁連の房川樹芳・副会長(共謀罪担当)の開会あいさつ
 共謀罪は600以上の犯罪に関して、単に合意しただけで犯罪が成立する内容の法律になっている。
 共謀罪は、国連が越境組織犯罪防止条約を締結するために必要といっているが、過去3回国会に提出され、すべて廃案になっている。法律が非常に危険だということから国民の多くの反対の成果だ。 
 ところが、昨年、「特定秘密保護法」が成立した。その中に共謀罪の規定も入っている。そういう意味からすると、共謀罪が成立する素地ができ上がりつつあるという危機感を覚える。
 最近の報道によると国際組織であるFATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)対して日本政府が共謀罪を成立させるという話をしていたという。秋の臨時国会に提出される危険性が非常に高い。日弁連は、「対策本部」の設置検討している。
[註]日弁連の対策本部は3月1日に設置され、本部長は会長が務めている。


 戦争準備法 絶対許さず


 日弁連共謀罪等立法対策ワーキンググループ委員・海渡雄一弁護士の閉会あいさつ
 昨年秋の臨時国会で特定秘密保護法が通り、日本版NSC法も通って、次に出て来るであろう「国家安全保障基本法(案)」、この3つを私は「戦争準備3法」と思っている。
 そして、戦争準備3法には裏もある。準備刑事3法案というのもあると思う。秘密保護法は両方に入っているが、あと2つは共謀罪と盗聴の拡大で、都合5個だが、まさしく戦争ができる国の体制をつくっていく。そのために国民を徹底的に監視できる刑事司法体制を整えていくことが、今進んでいるのではないか。
 秘密保護法廃止運動を強めていくことが、直接に国家安全保障基本法に対する闘いの大きなテコになるし、共謀罪新設・盗聴法の拡大に対する闘いを強めていくことになる。秘密保護法廃止の法案を出さなくてはならないし、戦争国家に突き進むような法律は絶対に許してはならない。
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