特定の犯罪、殺人罪、窃盗罪、建造物損壊罪で比較してみる。
殺人罪は最高刑が死刑、窃盗罪は最高刑10年、建造物損壊罪は最高刑5年。既遂・未遂・予備がすべて処罰されるのが殺人罪。
窃盗罪は既遂と未遂が処罰対象。
建造物損壊罪は既遂のみ処罰される。これら3つはすべて共謀罪の対象犯罪だ。窃盗は準備行為が処罰されないのに、なぜ窃盗の共謀が処罰できるのか。建造物損壊罪は、イラク派兵のときに杉並区の公園のトイレに「反戦」と書いた少年が建造物損壊罪で有罪になった。ペンキを持って書こうと準備をしていた、あるいはペンキを買ってきて実行着手しようとしていた、それは未遂だから処罰できない。建造物損壊罪は既遂でなければ処罰できない。
そこで、「何月何日、どこそこに『反戦』と書いて声を上げよう」と話し合ったとする。それが共謀になる。だが、予備も未遂も処罰できないのに、なぜ共謀だけ処罰できるのか。その根拠はどこにあるのか。どこにもない。
共謀を立証するためには室内盗聴が必要不可欠。この部屋で犯罪行為を協議していたとするなら、それをどうやって立証するか、この部屋のどこかに盗聴機を設置することだ。
ドイツでは1998年だったと思うが、室内盗聴が「やっと」認められた。憲法で住所の不可侵性があったから絶対に認められなかった。その憲法を改正して、室内盗聴の要件を厳格に規定して通した。それだけの議論があった。
ところが、今、法制審議会の特別部会で進められている室内盗聴についての議論は、どんどん先にいっている。もしかすると、認められかねない。憲法35条(令状捜査)はどこかへいってしまう。
私たちが日常的に政府のありかたを監視しない限り、悪法がどんどん通ってしまうのではないだろうか。共謀罪は私たちの日常生活を監視することにつながる。このような安倍内閣のファッショ姿勢に断固反対しなくてはならない。
おことわり 足立昌勝・関東学院大教授(刑法)の講演は、日弁連が去る2月12日に衆院第二議員会館で開いた「共謀罪創設反対を求める院内学習会」で行われたもので、編集部の責任で要旨にしました。
共謀罪法の骨子
@長期4年以上の刑を定める犯罪(600以上)で、団体の活動として組織により実行しようと合意(共謀)すると、実際に行動を起こさなくても、原則として懲役2年以下の刑に処される。A死刑、無期、長期10年以上の処罰が科せられた犯罪の共謀は懲役5年以下。B犯罪の着手より前に自首したときは、刑を減免される。
法案を巡る動き
00年 国連総会で国際組織犯罪防止条約採択
02年 法制審で検討
03年 第156通常国会に提出10月の衆院解散で1回目の廃案
04年 第159通常国会に2度目の提出(継続審議)
05年 8月の衆院解散で2回目の廃案 10月の特別国会に3度目の提出
09年 7月の衆院解散で3回目の廃案
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