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 2014.07.22
止めよう「戦争する国」
戦争関連法案を廃案に(下)


 前号で、海外での武力行使のために改定が準備されている関連法と、それをめぐる状況に触れたが、今回はそれらの主な論点を見てみる。


 武力行使の15事例


 政府は、@武力攻撃に至らない侵害に対処(3事例)、A国連PKOを含む国際協力等(4事例)、B武力行使に当たり得る活動(8事例)の15事例を示した。
 だが、これらは「例示」にすぎず、抽象化された法律で武力行使が可能とされれば、事例は「無限」(岡崎久彦・安保法制懇委員)に拡大されうる。しかも政府は、これらは相互に関連しているから一括法案にするとしているので、法案が出たら注意深い吟味が必要となる。また、自衛隊の部隊による武器使用が「武力の行使には当たらない」とされている場合も多く、ごまかされてはならない。


 離島等・公海で


 従来は、日本が攻撃されたときだけ個別的自衛権を行使できるという前提で、その他の不法行為に対しては海上保安庁や警察が「警察権の行使」として対処し、対処できない場合は自衛隊が出動するが、あくまで「警察権行使」として行動する枠組みだ。
 しかし今回、「離島等に武装集団が接近、上陸」、「公海上で不法行為」の際に「警察や海保がいない」場合、自衛隊が直接に武力で排除するため、「早期の下令や手続きの迅速化」を図るという。
 これは自衛隊が警察・海保に代わって国内・公海の治安維持に当たるもので、警察・海保がいても「能力」を理由に自衛隊が前面に出ることになる。しかも、「離島等」とは本土も含むとの説明なので、日本全土が適用対象になり得る。
 現実には考えにくいシナリオを示し、場合によっては国家間の武力衝突を招きかねない議論だ。
 また、「日本防衛に資する活動中の米艦」を、自衛隊法の「武器等防護」の拡大適用で防護するという。同時に多数の標的に対応できる米イージス艦を自衛艦が防護するというのも奇妙だが、東アジアで先制攻撃した米艦にも適用されれば、日本は先制攻撃に加担した交戦国となり、報復攻撃の対象にもなろう。


 「国際平和に貢献」


 7月1日の閣議決定は、「後方支援は武力の行使に当たらない」とし、「後方地域」、「非戦闘地域」というごまかしの概念に代えて、「現に戦闘が行われていない場所」という、限りなく戦闘現場に近いところで自衛隊が後方支援できるようにするという。
 他国部隊への後方支援には、武器・弾薬やその他の軍事物資、食料・水の輸送・提供や武器などの補修、医療支援なども含まれるから、それらがなければ維持・継続できない戦闘に不可欠であり、自衛隊が鉄砲を撃たないなら武力行使とは一体化しないというのは、国際的にも軍事的にも非常識な理屈で、これは敵側≠ゥら見れば明白だ。
 そして、「戦闘行為の現場になれば活動を休止・中断」と言う。その時、自衛隊は戦闘の現場に置かれ、「自己防衛」のためでも武器を使えば、なおのこと交戦当事者になる。
 「駆けつけ警護」や「代行治安維持」「邦人救出」などでも武器を使うと言い、これらも「武力行使」ではないと強弁する。その基準は相手が「国家又は国家に準ずる組織」かどうかだけで、それは「存在しないと考えられる」というが、紛争地の複雑な情勢はそれでは片づけられない。「駆けつけ警護」の対象例にNGOを持ち出しているが、これはNGOの非軍事・中立の原則を損なうことにもなる。


 集団的自衛権の行使


 憲法上の最大の問題の「集団的自衛権の行使」について、「密接な関係にある他国への武力攻撃」が、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」は武力行使できるという。
 安倍首相は、「石油や食料の供給国」を例に挙げたが、これは大日本帝国の侵略の生命圏§_と同様で、米国だけでなく世界中、どこででも武力行使が可能になる。これには国連決議も不要だ。 


 国際紛争では、どちらが先に攻撃したか判然としない場合も多いが、A国に加担してB国を攻撃すれば、B国には日本による先制攻撃となり、反撃の権利≠与えることにもなる。
 以上、いくら「武力の行使ではない」「自衛だ」と弁解しても、やることは武力行使であり、戦争である。憲法破壊の暴走を国会は止められるか。全国的な大運動こそがカギである。
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