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 2016.10.04
違憲の任務を与える
「動き出す安保法制と今後の課題」


 柳澤協二氏が問題提起


 集団的自衛権の行使容認などを柱とする戦争法(安全保障関連法)の強行成立から先月19日で1年経った。安倍内閣は国連平和維持活動(PKO) で「駆けつけ警護」など新任務の訓練を開始した。11月に南スーダンに派遣される陸上自衛隊青森第5連隊には、戦闘部隊が含まれる。政府は今月、部隊への任務付与を判断する。
 こうしたなか、集団的自衛権行使容認など安倍内閣の安全保障政策に反対の論陣を張っている元内閣官房長官補・安全保障担当の柳澤協二氏は9月16日に東京・霞が関の日弁連会館で東京弁護士会など東京の3弁護士会が開いたシンポジウムで「動き出す安保法制と今後の課題」と題して問題提起した。
 シンポジウムは、「安全保障関連法と特定秘密保護法による立憲主義・民主主義の危機」をテーマに開かれたもので、柳澤氏のほかに石田勇治東大教授、ジャーナリストの青木理氏、情報公開クリアリングハウスの三木由希子理事長がパネリストとして出席した。
 

 柳澤氏の問題提起


 安保法の本質は、海外での自衛隊の武器使用拡大と、日米の軍事的な一体化。武器使用の拡大が何をもたらすか。南スーダンPKOで11月に東北方面から派遣される部隊に駆けつけ警護の任務が与えられるといわれる。
 国連の報告では、首都ジュバで政府系、反政府系、そしてPKOの部隊が女性を暴行する事件が年に100件あったとか、両派の銃撃戦で自衛隊の宿営地にも流れ弾が飛んできたともいわれる。治安がめちゃくちゃ悪い。 だから国連要員が襲われているときに助けに行く駆けつけ警護が必要になるということだが、そのようなことができるのか。今までは自衛隊の海外での武器使用は自分の身を守るため、最後の手段としての武器使用しかできなかった。だから、自分が抑制すれば武器を使わずに済んだ。
 国連職員が武装勢力に襲われているから、駆けつけて助けることができるようになる。つまり、武器を使わなければできない任務が与えられる。相手も撃ってくる。撃ち合いになれば、どちらか、あるいは双方に死者が出る。それが新たな危険だと国会で議論になったが、まともな答えは返ってきていない。
 国の意思で戦争に行っているのではないので、武器使用の権限は国内で警察官が使うのと同じ。警察官職務執行法と同じだ。自衛官個人が相当と認める時に合理的に必要な範囲で武器を使ってもいい。ただし、正当防衛・緊急避難の場合だけ。
 そうすると、武装勢力に人が襲われている時に、正当防衛と認定できるかもしれないが、先に撃てない。なぜそうなるか。憲法上、軍隊がいないからだ。
 そうなれば個人の武器使用権限だから、撃って殺したら責任は個人に行く。他の国では軍法会議があり、軍法に従っている限りは個人が刑事責任を問われることはない。それが軍隊だ。日本には軍隊はないから撃って殺したら、殺した自衛隊員の殺人となって、刑事責任が問われる。 傷害、あるいは過失致死だったら、誰も裁けない。地位協定を結ぶから、現地の裁判は受けない。裁判権は派遣国が留保しているから宙に浮くという矛盾に満ちた状態になる。なぜか。憲法は、自衛隊が外国に行って人に向かって鉄砲を撃つことを想定していないからだ。つまり、自衛隊員に憲法違反の任務を与えようとしている。この矛盾をどうするのか。きちんと説明しなくてはおかしい。
 起きてから、「想定外」と言っても、想定外ではない。専門家でなくても、常識で分かる。

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