ジャーナリスト小笠原みどりさん講演<3>
ブッシュ政権下で大きくなっていったNSA監視システムの方針は、「コレクト イツ オール」=全てを収集することだ。これがスノーデンの明らかにした機密文書の1つで、大きな反響を呼んだ。「スニフッ オール」=全てを嗅ぎ分ける、次は、「ノウ イツ オール」=全てを知る、そして、すべてを収集し、全てを処理し、全てを利用し、全てをパートナーにする。
つまり、今まではNSA、または米政府が「怪しい」と思った人物を特別な監視の下に置くというスパイのやり方から、特定の容疑者といった枠を取り払って、誰一人の例外なく全ての情報を収集したいという構想への転換だった。
これはどう見てもクレイジー、妄想だ。歴代の権力者たちが夢見たかもしれないが、実現不可能と打ち捨てられたかもしれない妄想が、「ITの力によって可能になった」と、少なくともNSAの幹部は信じている。そのためには当然、私たちが使う回線、サーバー、ネットワークの機器、あらゆる情報の通過点にできるだけ多くのスパイ機器を忍び込ませる方法が取られるようになった。
イギリスの諜報機関GCHQ(政府通信本部)は、NSAに負けず劣らずえげつないスパイ活動をしているところだが、米軍は三沢基地で取った情報をGCHQともシェアして使っている。日本で取った情報だから日本政府とシェアするのでなく、あくまでも自分たちの陣営、とくに「5アイズ」と呼ばれる英語圏の国々、米、英、豪、ニュージーランド、加で情報を共有し、とくに英米は緊密な連携を取っている。
NSAの盗聴・監視の手段はどのようなものか、インタビューでもスノーデンが一番強調していた手段は、国際通信ケーブルやサーバーなどの情報通信インフラに直接侵入し、そこを通る情報をすべてコピーしてNSAのデータベースに転送する方法。これは最も大規模に情報を収集できる方法で、なおかつ、こうしたシステムをいったん構築すれば人間の判断、人間の手を介在する必要はない。
日本からはNTTドコモが参加して、アメリカ側からベライゾンとかATNTというNTTドコモと同じような大きな通信会社、韓国、台湾、中国、アメリカの5カ国の地域の通信会社が合同で敷設した国際通信海底ケーブル(パシフィック・エクスプレス)の上陸地点に侵入拠点が作られている。
日本でも千葉県の南房総市に海底ケーブルの上陸地点があり、そこにNTTの新丸山局がある。
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