2016.11.08
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「テロ対策」と言えば何でも通る |
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ジャーナリスト小笠原みどりさん講演<6>
「軍産複合体」は、アイゼンハワー米大統領が言った言葉だが、武器や航空機を作っているようなハード面の産業だけでなく、シリコンバレー全体がかなりの程度で米政府に協力していて軍事の中心部に位置するようになってきている。
それは許認可の問題であると同時に、そこで協力すれば自分たちのネットワークがワッと広がって政府からの仕事が入ってくる。これは住基ネットや今回のマイナンバー制度も同じだが、政府というのは得難いお得意様なのである。その上、取りっぱぐれがない。
大量の大きなシステムを構築し、それによってNECでも東芝でも巨額の利益を得ることができる。なおかつ情報網としても、非常に広い範囲を捕捉できるという経済的なインセンティブが働いて企業が国家に抵抗することなく情報を提供するし、経済的なパートナーになっていっている実情がかなりはっきりと現れてきた。
次はスノーデンがインタビューで言っていた点で、NSAの監視システムは対テロ戦争下で作られたものなのでテロを防止する、あるいはテロ捜査に役立たせることが唯一の目的であり、その外の経済スパイや外交スパイといったものではなくて、暴力や犯罪を防ぐためにシステムは作られた。
実際、今度の共謀罪法案の国会提出問題も2020年の東京オリンピックのことが強調されていたが、日本の政府も「テロ対策」と言って出してくる。
今、フランスで起きているようなことは日本では全く起きていない。それでも、「テロ」という掛け声をかければ、政府はなんでもできるという状況にある。セキュリティの一人勝ち、圧勝だ。
実情がなくても、「セキュリティ」という言葉を一つ出せば、「テロ対策」と言えば、何でもできる。ほとんど議論もないし、みんなを黙らせることができるという点では、「9・11事件」以降はセキュリティの時代、政治がそれで動かされてしまうような時代に入っているように思う。
セキュリティの一人勝ち、圧勝にもかかわらず、こうした巨大なNSAの監視システムがあっても、フランス政府は昨年のパリ襲撃事件から非常事態宣言をずぅーっと、ほとんど無期限で続けている。非常事態宣言下では軍も警察も莫大な権力を持ち、令状なしで身柄を拘束したり、家宅捜査したり、なんでもできる。
にもかかわらず、フランスではニースで再び事件が起きた。監視がどれだけエスカレート・強化されても、テロは防げていない。しかし、このことはほとんど言われていない。 |
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