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 2016.12.27
スノーデンの警告<12>
「ひたひたと恐ろしいものが…」


 ジャーナリスト小笠原みどりさん講演<12>


 海渡雄一弁護士(写真正面右から2人目)は小笠原講演後に行われたシンポジウムで要旨次のように話した。
 8月6日の『読売新聞』社説は、「テロ対策のために共謀罪を早く作れ、顔照合システムも駆使していい、人権への配慮は必要だが、国際的には共謀罪がテロを防ぐ有効な手段と認められている」と言っている。 さらに「令状なしの『行政傍受』を認めるべき」と書いている。小笠原さんの講演にあったNSAがやっているのは正に行政傍受だ。NSAの情報をもらうために日本も行政傍受して、交換するシステムが必要だと読売は打ち出した。そしてその数週間後に『朝日新聞』が次期臨時国会に共謀罪法案が出てくるようだと報道した。


 先に来日した国連特別報告者のデビッド・ケイさんは、「日本ではメディアの独立性が欠けていて、国からバッシングを受けたときにジャーナリスト共同のネットワークがない」と強調していた。共謀罪に対する新聞各紙の報道が極端に違うのはなぜか。ひたひたと恐ろしいものが来ているような気もする。
 春に刑事訴訟法を大改悪する法律が成立したが、これに対する有効な反対運動ができなかった。日弁連がこけてしまったからだが。これから共謀罪の大反対運動を起こしていかなくてはならない。
 監視社会に反対する運動が真っ先に克服しなくてはならないのは、「自分はやましいことをしていないから盗聴されても平気」ということ。 この世の中には、国家権力に盗聴を許したら絶対いけない、そういうことをしたら社会の存在が崩れてしまうような通信とか、会話が存在する。自分がそういう会話の当事者になるかどうかは別にして、そういうものを守るために通信の秘密は守られなくてはならない。自分がやましいことをしているかどうかは関係ない。ここの論理の転換がものすごく大事だ。
 政府が戦争行為を準備しているとか、原発事故の発生を隠しているとか、国土の広範な環境汚染が発生しているのに秘密にしているとか、そうしたことを内部告発者がジャーナリストにつなごうとした瞬間に傍受されてつぶされる。秘密保護法の共謀罪に通信傍受が適用されたら、そういう世界になる。


 秘密保護法の共謀罪はできてしまった。600個の共謀罪が間もなく作られようとしている。日本の警察はその次に、それらの共謀罪全部に通信傍受法をよこせと言ってくるだろう。そうなった時に我々は「しゃべるのを止めてしまおう、その方が身の安全だ」という気持になるのではないか。そうなった時は民主主義の死滅だ。
 スノーデンは社会の進歩を止めてしまうと言っていたが、自らの属している社会、国家に対して真実を知ることができないという絶望感があるところでテロのようなものが発生してくると思う。監視社会と闘うということは民主主義を守るということだ。
◇ 編集部より 今回でこのシリーズを終わります。講演などの文責は編集部にあります。