新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 憲法/平和
  4. 2017.01.17
 2017.01.17
労働運動監視にGPSを使う
鉄道労働組合員の家族までも追跡


 韓国の実態を白石孝さんが報告 


 プライバシー・アクション代表の白石孝さんは、「監視社会を考える連続学習会第2回」で「市民運動・労働運動監視にGPS使用〜韓国版盗聴法の実態〜」について報告した。第2回学習会は12月8日、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会などが主催して東京都内で開かれた。白石報告は次のような内容だ。
 
 ◇ 韓国では、ストライキに関わった全国鉄道労働組合(鉄道労組)の複数の組合員と、その家族がリアルタイムで携帯電話の位置情報によって警察に追跡されていたことが明らかになっている。
 鉄道労組のストは、朴槿恵政権が地方鉄道の赤字解消のために民営化の方針を示したことに対して2013年12月9日から30日にかけて大規模に行われた。組合員らに対する位置情報の追跡は、13年8月16日午前0時0分1秒から14年1月17日23時59分59秒までの5カ月間にわたって行われた。

 * このことは、鉄道労組のキム・ミョンファン委員長(当時)らに警察署から「通信事実確認資料」と題する通知が届いたことで明らかになったものだが、そこには警察が5カ月にわたって携帯電話の発信、着信を追跡して位置情報を追跡した事実が記されていた。
 そして、驚くべきことには、鉄道労組幹部の配偶者や子ども、親までも含まれていたことだ。警察と検察は、鉄道労組のストを「業務執行妨害罪」として多くの幹部を逮捕・起訴したが、業務妨害罪の被疑者でもない家族が位置情報の追跡を受けていたのは、組合幹部らが家族と会っているときに逮捕するために家族を「サイバー追跡」していたものと考えられる。
 ストは合法的に決定・実施されたものであり、業務執行妨害罪に問われること自体が不当であり、鉄道労組は一審、二審で無罪判決を勝ち取っている。

 * 鉄道労組の組合員らに対する位置情報の追跡は、韓国版「盗聴法」によって行われた。韓国憲法18条は、「すべて国民は、通信の秘密を侵害されない」と規定し、これを保障する個別法として「通信秘密保護法」が1993年制定されている。ところが、通信秘密保護法には警察捜査を例外とする規定があり、権力による市民監視が行われているのである。
 鉄道労組の組合員15人とその家族21人は14年5月、違憲訴訟を起こした。そして、その中で家族が銀行や保険会社、メディアへのアクセスをリアルタイムで追跡されていたこと、健康保険公団が所有する組合幹部の診察記録、調剤内容が令状なしで捜査されていたことなども判明、この問題でも違憲訴訟が提起された。
 日本でも昨年、盗聴法が大改悪された。日本と韓国で事情は異なるが、捜査対象者に対する監視強化や改悪のプロセスに共通項は多い。韓国での市民監視の実態は、決して対岸の火事ではない。