2017.02.07
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人権否定ジャンパーで家庭訪問 |
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『朝日新聞』1月18日朝刊に、「生活保護『なめんな』市職員の服に」、「小田原市『不適切』とおわび着用禁止」という見出しの記事が掲載されました。
10年も問題にならず 神奈川県小田原市で2007年に保護費の支給を打ち切られた男性が、市の生活保護担当職員3人を杖やカッターナイフで負傷させる事件がありました。
その後に、担当部署で、「保護なめんな」や「不正受給者はクズだ」などとローマ字で書いたジャンパーを自費で作成し、今までに64人の職員がこのジャンパーを着用し、生活保護を利用している家庭を訪問していたというものです。
最近、利用者から市に指摘があり、発覚したようですが、10年間も問題にならなかったことには驚ろかされます。
私も生活保護担当ワーカー時代に、後輩を助けようとしてネクタイを締めかけられたり、覚醒剤中毒者に殴られそうになったりしたことがあります。残念なことですが、利用者の中には、攻撃的な人や暴力を奮う人もいます。そのため、組織としてガードを固めるために過剰に反応することがあります。しかし、今回の事例は、あまりにも憲法25条(生存権保障)の理念に反し、人権感覚に欠けるものです。
生活保護は最後の砦
今回の事例の大きな問題は、生活保護を利用している人を「悪」の対象として見ていることです。生活保護利用者は、高齢者や障がい者、母子家庭など、経済的に困っているだけで善良な人たちが大半です。しかも、生活保護法では経済的に困窮した場合には無差別・平等に保護することになっています。
安倍自公内閣は2014年12月、国民的な反対運動を押し切って強行採決によって特定秘密保護法を成立させましたが、時を同じくして「改正」生活保護法が成立し、保護費削減や扶養義務の強化が行われています。
そのため、生活保護制度に対する「スティグマ(恥辱感)」で、生活保護基準以下の収入しかないにも関わらず制度を利用しない人も多いのです。小田原市の職員はこのような人たちに対して、行政の権力的な姿勢を示したことになり、許せません。
人権研修と人員増を
今回のような事件が発生する背景には、生活保護行政の現場の繁忙さがあります。都市部では、1人が80ケースを担当するのが基準ですが、中には100ケース超える自治体もあります。目先の業務に追われ、研修などは後回しされているのが実情です。小田原市も来年度4名の人員増を行うようですが、どこの自治体でも最低、基準に沿った人員配置が求められます。 (清水英宏=社会福祉士) |
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