新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 憲法/平和
  4. 2017.02.21
 2017.02.21
南スーダン「日報」巡り
九条に抵触で「戦闘」使わず


              
 大臣炎上


 「炎上国会」の大見出しを、2月10日付『朝日新聞』朝刊1面トップは「閣僚答弁乱れ 辞任要求続々」の見出しとともに打った。稲田朋美防衛相の南スーダンPKOでの「戦闘」日報問題や、「共謀罪法案」を巡る金田勝年法相の「質問封じ文書」配布・撤回問題などで民進党など野党は2人の辞任を要求した。「炎上」しているのは国会ではなく、2人の大臣・安倍内閣だ。

 防衛省は2月7日、当初は「廃棄した」と説明していた南スーダンでの陸上自衛隊のPKO(国連平和維持活動)の日報を一部黒塗りで開示した。この日開示したのは昨年7月11日、12日の日報など4冊の関連資料だ。
 日報の廃棄・開示を巡る問題は昨年9月30日、ジャーナリストの布施祐仁さんの開示請求に始まるが、『東京新聞』などによれば経過は次のようだ。
 防衛省は開示請求を受けて、12月2日、布施さんに「既に廃棄しており、保有していなかった」と通知。16日に防衛省は稲田防衛相に日報廃棄を報告、稲田氏は再調査を指示。22日に河野太郎衆院議員も再調査を要請。26日、防衛省が日報の電子データの存在を把握。17年1月27日、日報の電子データの存在を稲田防衛相に報告。2月6日の日報保管確認、7日の一部黒塗り「開示」となる。
 この経緯の過程では、16年11月15日に政府が「駆けつけ警護」の新任務付与を閣議決定し、12月12日にはその運用が開始された。

* 日報の廃棄・保管を巡る問題は、政府側の解釈で廃棄し、都合の悪い文書を存在するのに存在しないことにして隠蔽する手法が横行していることだ。
 憲法解釈を変え、集団的自衛権の行使を可能とする14年7月の閣議決定を巡り、内閣法制局が情報公開請求に「非開示」とした法制局長官用の想定問答について、総務省の情報公開・個人情報保護審査会が開示を認め、法制局は一転して開示した「事件」がある。これは1月のことだ。

* 開示された日報を巡って事態は展開する。日報には「7月7日の衝突はジュバ市内全域の先頭へと拡大。10、11日にも自衛隊宿営地の周辺で戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘を確認」とある。
 防衛省が日報を廃棄したとして非開示扱いとした時期は、駆けつけ警護の任務付与が問題となっており、意図的に隠した疑いが指摘されている。
 日報にある「戦闘」を巡って稲田防衛相は2月8日の衆院予算委で「法的な意味での戦闘行為ではない。国会答弁する場合、憲法九条上の問題になる言葉を使うべきではないから、一般的な意味で武力衝突という言葉を使っている」と答弁したのである。
 政府が戦闘が起きていることを認めれば、憲法九条やPKO参加5原則に抵触し、自衛隊は南スーダンから撤退に追い込まれる。そのため国会や国民に事実を隠したまま駆けつけ警護の付与・派遣の継続を図ろうとした意図が透けている。稲田氏の不誠実な答弁に対し、民進党の後藤裕一氏は9日の衆院予算委で辞任を要求した。

* 当時の状況については『2016年、ジュバで発生した暴力とそれに対するUNMISSの対応についての国連独立特別調査報告書』 ( 角田由紀子・仮訳)の冒頭に次のように記されている。

 背景 
 7月8日から11日にかけて南スーダンのジュバで起きた危機では、3日間にわたる激しい戦闘があり、その結果多くの民間人、国連南スーダン派遣団(UNMISS)の2人の平和維持活動隊員が死亡し、南スーダンの大統領サルバ・キールと彼のもとで前第一副大統領であったリェク・マシャールの脆弱であった和平合意を崩壊させた。
 (『安保法制違憲訴訟の会ニュース』No3 2017年1月25日より)