2017.03.07
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「共謀罪」→テロ等組織犯罪準備罪 |
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話し合うことが罪になる
安倍政権が「テロ対策」の名目で共謀罪を新設するために国会に出そうとしているのは、組織犯罪処罰法改定案です。
この法案は2000年代初めから3回にわたり国会に提出されましたが、わが国の国内法の基本原則に反するものであり、捜査機関による恣意的な運用により、市民の人権が脅かされると日弁連をはじめとして多くの市民団体や野党が反対し、3度とも廃案に追い込まれたものです。 安倍政権は、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックを利用し、その成功のためにテロ対策が必要と外国人への警戒心を煽り、国内における市民監視・管理を強化しようとしています。
「共謀罪」から「テロ等組織犯罪準備罪」へ、対象も「団体」から「組織的犯罪集団」に、構成要件も、共謀だけでなく「実行の準備行為」を新たに加えました。これまでの法案では、一気に676もの犯罪が共謀だけで摘発可能になりましたが、政府は277に絞り込んだと言われています。
■共謀罪とは何か
共謀罪とは、具体的な犯罪について、2人以上の者が話し合って合意することだけで処罰することができる犯罪のことです。市民が法律に違反することを話合うだけで処罰できる「思想・言論取り締まり法」です。現在の日本の法律は、犯罪が処罰される場合は、人の生命、身体、財産など、法律で保護される法益が侵害されて、被害が発生することが処罰の対象とされています。これを「既遂処罰の原則」といいます。
このようにわが国の基本原則は、「既遂」の処罰を原則とし、「未遂」は例外的、「予備」は更に例外的、「共謀」にいたっては極めて特別な重大な法益侵害に関するものに限って処罰するというものです。しかし、共謀罪法案で新設して処罰しようとする犯罪の数は277です。
■盗聴・潜入が日常
人と人との行為が犯罪にあたるかどうかの判断はたいへん難しいと言えます。共謀罪は「意思」の処罰であり、いったん合意すれば処罰されます。処罰を逃れる方法は密告するしかないのです。
共謀罪の捜査では、犯罪の捜査の在り方が一変します。通常の捜査は、殺人事件など事件がおきると、犯罪場面からさかのぼって犯人を特定していきます。しかし、共謀=「合意」は、まだなんら「被害」がでているわけではないのです。
「被害」が出ていないのに、どうやって共謀を捜査するのか。それは、日常的に市民が法律に違反する行為を話し合っていないか広く監視する以外にありません。そのためには、市民の会話、電話、メールなどの盗聴が大きな役割を果たすことになります。
また、盗聴に限らず、いろいろの団体に、スパイを送り込むか、協力者をつくり、共謀があったことを密告させることです。いずれにしても、市民の監視の動きが一挙に強まることは疑いがありません。
■国民欺く違憲立法
日本政府は、すでに締結した国際的な組織犯罪の防止の関する国際連合条約が「重大な犯罪」について共謀罪を設けることなどを求めていることから、条約を批准するために必要だとしています。
国境を越えた組織犯罪への対応は必要であり、日弁連(共謀罪の創設に反対する意見書/2012年4月13日)も「国連条約」も批准されるべきとしています。日弁連によれば、この条約を批准した各国とも、国内法の原則に合わせた立法でよく、日本には、すでに、重大な法益を侵害する犯罪などに、陰謀罪が8、共謀罪が15、予備罪が40、準備罪が9存在しており、条約の批准は十分に可能としています
。政府は、処罰対象は「組織的犯罪集団」に限ると説明し、その集団は、テロ組織、暴力団、薬物密売組織と例示しています。しかし、国会での質問に、金田勝年法相は「それ以外のものも含まれる場合がある」とした上、なにが「共謀」にあたるか判断するのは捜査機関と述べました。安倍首相も組織的犯罪集団の「法定上の定義はない」と認めました。これは事実上、警察などに判断をゆだねるというもので、いくら、労働組合や市民団体、民間企業が対象にならないよう法文上明確にする、といっても歯止めになる保証はありません。「テロ対策」という口実は崩れています。
日本はすでにテロ防止のための13の国際条約を締結し、57の重大犯罪について、未遂より前の段階で処罰できる国内法があります。東京五輪の開催を理由にして国民を欺き、思想・内心を取り締まる違憲の法律を成立させようというのは、極めて悪質です。
法案反対の声は広がっています。この声を無視し暴走することは絶対に許されません。(秋葉雄一郎) |
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