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 2017.04.11
軍学共同〈中〉
その実態


 日本学術会議

 軍事研究禁止を継承

 総会前の幹事会で決定


 日本の科学者の代表機関として国が設置している「日本学術会議」(会長=大西隆・豊橋技術科学大学長)は3月25日に開いた幹事会で、軍事・戦争を目的とする研究を禁じる声明を今月13日に開く総会を待たずに原案通り決議、発表した。

* 声明案は、同会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」(委員長=杉田敦法政大教授)が3月7日、出席した委員13人全員一致でまとめたもので、過去2回の声明を「継承する」と明記、研究の適切さを技術的・倫理的に審査する制度を各大学などの研究機関が設けるよう提言し、民生分野の資金充実も求めている。
 同会議は、先の大戦で、科学者が戦争に協力したことへの反省から1950年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」とする声明を、67年には「軍事目的のための科学研究を行わない」とする声明を、それぞれ発表している。
 過去2回の声明は総会で決議されたが、現在は制度改正で会長を中心とする幹事会で採決することが通例となっている。今回は学術会議の原点に関する内容であることから、総会で議論して採決するよう検討委員会が提案していたが、「手続きを変える必然性はない」などといった意見が続出して決議。総会では議論だけすることで一致したという。

* 学術会議の3回目となる声明の発表は、防衛省が一昨年、「安全保障環境が厳しさを増している」として将来の防衛装備品の開発につながる大学などの研究機関に研究資金を提供する制度を始めたことによる。防衛省は制度について、「デュアルユース(軍事でも民間でも両方使える)技術の発展が目的だ」と説明してきた。
 そうしたなかで、大西会長が昨年4月の総会で「大学などの研究者が、自衛の目的にかなう基礎的な研究開発することは許容されるべきだ」との見解を示した。これを受けて翌5月の幹事会で、科学者と安全保障技術など軍事的な研究との関わり方について議論し、過去2回の声明を見直すかどうかを検討する「委員会」を設置して議論を開始した。

* 声明はまず、現在の日本の科学界がおかれた状況について、「学術と軍事が接近しつつある中、大学などの研究機関における軍事的安全保障研究が学問の自由、および学術の健全な発展と緊張関係にあることを確認する」とした上で、これまでの2つの声明を「継承する」とする。 防衛省が始めた研究資金の提供制度については、「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募や審査が行われ、政府による研究への介入が著しく問題が多い」と指摘している。

* 杉田委員長は声明案をまとめた時点の3月7日の記者会見で、「防衛省の資金提供制度への応募について、否定的なメッセージが非常に強いと受け止めていただけると思う」とした上で、日本の科学者と軍事的な研究との関わり方について、「日本学術会議は、この問題について半世紀の間、メッセージを発信してこなかった責任がある。この声明をきっかけに今後も議論を積み重ねていくことが必要だと考えている」と述べた。