新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 憲法/平和
  4. 2018.05.15
 2018.05.15

改憲4項目案の危険性と欺瞞性
自民党改憲案と3000万署名運動  下
大阪経済法科 大学教授 澤野義一
楽観視できない 安倍政権の退陣を

改憲国民投票法の問題点 
 自民党改憲案の内容や改憲日程がメディア等で取り上げられるのに比べると、国民投票が依拠する国民投票法の問題がほとんど議論されていない。
 もし、その問題点が検討・是正されることなく、改憲発議に続き国民投票が早急に行われることになれば、自民党等の改憲勢力に有利な結果をもたらすことになる。主要な問題点は以下の通りである。

①広告規制 
 広告規制については通常選挙と異なり有料広告やその資金源に規制がないため、自民党は最高額の政党交付金のほか、財界や神社本庁等からの寄付金(何百億円ともいわれる)を基に、電通や博報堂等の大手広告代理店が支配するテレビCM等を通じて改憲をPRできる。
 この点では、野党や市民は全く不利になる。国民投票協議会を通じた無料広告については政党が中心で、市民団体に認められないといった問題もある。

②公務員・教員の投票運動 
 公務員と教員の地位利用による投票運動は禁止されているが、処罰規定はない。しかし、このような規定があることで、公務員や教員は公務員法等で処分される恐れがあり、改憲にかかわる表現行動の自由が抑制されることになる。

③投票運動期間 
 改憲反対派にとっては改憲のPRや運動が制約されるなか、改憲発議から国民投票までの周知期間が60日から180日以内というのは、国民投票運動期間としては短いという問題がある。

④最低投票率 
 国民投票に関し最低投票率規定(例えば、50%以上の投票率がある場合にのみ投票を有効とする規定) がないことは、積極的に改憲を支持する少数の有権者の賛成だけで改憲が成立する。仮に40%の投票率しかないのに、その過半数の20%が賛成すれば改憲が成立することになるのは、国の最高法規である憲法改正のあり方としては問題である。

⑤国民投票の過半数 
 国民投票が承認される国民の「過半数」については、棄権や無効票が含まれないため、通説の投票総数(無効票と有効票の合計)でなく、実質的に有効投票となっていることは、改憲提案側に有利になるという問題がある。

 このような欠陥のある国民投票法の改正を求める野党の見解もあるが、自民党がそのような改正に応じることは考えにくい。むしろ、自民党が投票法改正論議を行うことを口実にして、野党を早期に憲法審査会に参加させ、自民党の改憲原案策定論議に巻き込む恐れがある。
 野党に今重要なことは、投票法改正論議に乗ずるのではなく、投票法を運用させない事前の改憲発議阻止の運動である。

3000万署名運動の意義 
 安倍政権下の自民党の改憲策動に対して、多くの野党は消極的ないし反対の姿勢を示し、世論調査では国民の過半数が反対している。
 また、自衛隊の日報、森友・加計学園関連文書、裁量労働制データ等の公文書の隠ぺい、改ざん、ねつ造、虚偽説明問題で、安倍内閣の支持率が30%前後にまで下がり、不支持率の方が多くなっている。
 このことから自民党に改憲を推進する余裕も資格もないと考えられるが、楽観視することはできない。自民党は改憲4項目案を早急に確定し、本年度中の国会(通常国会末か臨時国会)で改憲発議を目論んでいる。
 2019年度になると、天皇の退位と即位に関連する儀式や参院選等があるため、改憲の取り組みが難しくなることが想定されるからである。
 自民党や安倍政権が現在の窮地の諸問題から世論の関心をそらすためにも、改憲の口実をあれこれとつけて改憲策動を進めることに対しては、安倍内閣の退陣を求めるとともに、改憲発議と国民投票をさせない3000万(投票者数の約過半数)の署名(安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名)運動に取り組むことが必要である