2019.02.12
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“命の価値”を問う |
障がいのある子の命の価値について、子どもを亡くした両親が差別のない公平・平等・明確な判決を求めた裁判の判決が、東京地方裁判所第103号法廷で3月22日午前11時に言い渡される。
障がい児の入所施設を営む被告である社会福祉法人藤倉学園(以下「被告」)は、安全に配慮する義務を負っていながら履行せず、管理態勢が極めてずさんであったため、原告の子である松澤和真君は15年という極めて短い生涯を閉じた。
和真君が歩むはずであった明るい未来、可能性に満ち溢れた人生は、被告のたび重なる重大な過失によりその一切が絶たれた。
和真君は重度の自閉症と診断されているが、成長するに従い発達し、学校では教師の指示に従い社会性も身につけていた。今の社会で更に配慮が浸透すれば十分に活躍できる少年であった。
ところが、和真君が亡くなったことの補償の交渉過程で被告は、和真君に働く能力がないとして一般に交通事故等で15歳の少年が亡くなった場合のわずか5分の1にも満たない額しか呈示せず、気に入らなければ法的根拠を示せと訴訟を誘発する主張をしてきた。
両親はわが子の命を軽視して事故を引き起こした上に、将来の能力を否定して差別する被告の対応に怒り、提訴に踏み切った。悔しい思いを次のように述べている。
(父)「子どもを事故で亡くした親は、事態を生涯忘れることができません。心の痛みを一生背負っていかなくてはなりません。子どもに障がいがあっても無くても、悲しみに違いはありません」「亡くなった子どもにしてあげられることは、子どもの死に真っ直ぐに向き合うこと、そして亡くならなければならなかった原因を見極めることと考えています」「施設で差別を受け、人として扱われず、安全配慮に手抜かりがあったことを許すことはできません」「私どものような経験をされる方が無くなるためにもとことん争うことを決意しています」「過失で人の命が失われたのです。被害者の気持ちに寄り添った判決を強く願います」
(母)「世界に二人といない大切な息子、私の元気の源でした。藤倉学園はなんということをしてくれたのでしょう。どうやって責任を取るつもりなのか…」「和真を行方不明にされた日で私の人生は終わってしまった…そう思います。その時のことは今思い出しても、とても辛いものです」
この裁判は、障がいのある少年の命の価値を問う裁判だ。その意味で判決は和真君という人間の尊厳の名に値するものでなければならず、言うまでもなく、命の価値は人によって差をつけることができない。障がいの有無や程度を理由として、障がいのない少年の命との差別をすることがあってはならない。
日本の司法は、障がいのある人の命の価値について全く理解のない判決をした時期があったが、少しずつ改善されてきた。しかし、今なお司法判断において障がいのある人と障がいのない人との差別の全くない判決は出ていない。
国内的にも国際的にも今こそ日本の司法は、差別的扱いを残した温情判決の域を脱し、差別的扱いを完全に撤廃した公正・平等・明確な判決を出すべきだ。
(弁護士・清水建夫) 判決の傍聴を希望する方は 03(3435)1177=清水・新垣法律事務所まで。
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